普段、多くの人は特急列車ではなく、通勤電車や近郊列車を利用していると思います。それでは遠く離れたヨーロッパやロシアでの通勤電車・近郊列車事情はどのようなものでしょうか。日本だと特急列車の紹介がメインとなってしまい、あまり知られていないような気がします。今回は私の感想を交えながら、ヨーロッパ・ロシアの通勤電車・近郊列車事情を紹介します(なお、この記事でいう「ヨーロッパ」は私の守備範囲であるドイツよりも東の地域を指します)。

ヨーロッパ・ロシアの通勤電車・近郊列車事情 

 

ヨーロッパの通勤電車はロングシートとボックスシートの混在形が多いように思えます。日本のようにロングシートだけという車両は少数で、地下鉄に限られます。ヨーロッパにおける通勤電車の代表格はドイツのSバーンではないでしょうか。Sバーンは都心中心部と周辺部を結び、地下鉄Uバーンと共に都市交通網の一躍を担っています。ただし、日本とは異なり、急行ではなく、普通列車のみの運行になります。

 

一方、近郊列車は都市と郊外の町を結びます。ただし、ヨーロッパは日本とは国土開発のやり方が異なり、都市圏を出るとすぐ目の前には田園風景が。初めてヨーロッパを訪れる人が近郊列車に乗ると、ローカル線のような印象を抱くかもしれません。

 

ロシアでは通勤電車・近郊列車共にロングシートは見かけません。現在、モスクワではSバーンのような通勤電車網を構築しているため、今後、ロングシートが付いた車両が登場するかもしれません。

2階建てもある!ユニークな車両がたくさん!

 

もう少し、ヨーロッパ・ロシアの通勤電車・近郊列車を見ていきましょう。ヨーロッパの通勤電車で日本と異なる点は自転車と半自動ドアです。たとえば、ドイツのSバーンでは自転車の持ち込みが許されています。車内には自転車が置ける専用スペースが設置されているため、とても便利です。

 

ドアは半自動となっており、乗降する際はボタンを押さなければなりません。「そんなの不便じゃないか」と思われるかもしれませんが、冬になるとありがたみを感じます。ヨーロッパの冬は氷点下が当たり前。少しでも冷気の侵入を防ぐにはボタンを利用した半自動ドアが有効です。

 

一方、近郊列車は日本とは大きく異なります。まず、2階建ての車両が実に多い!車内は一部を除き、クロスシートになっています。たとえば、チェコ製の2階建て近郊電車はCity Elefant(都市の像)という愛称が付けられています。City Elefantはチェコだけでなく、周辺諸国でも働いています。また、3両編成といった短編成が多いことも特徴。今まで10両編成のような近郊列車による長大編成は見たことがありません。ヨーロッパは日本と比べると、人口密度が低いので、短編成でも対応可能です。

 

ロシアは軌間がヨーロッパよりも広い1,52ommなので、通勤電車・近郊列車の車内も広く感じられます。たとえば、ヨーロッパの近郊列車は2列+2列ですが、ロシアでは2列+3列をよく見かけます。また、首都モスクワを走る外環状線の通勤電車は日本の特急列車並みの仕様。クロスシートが並び座面にはテーブルが付いています。おそらく、日本ですと、特別料金を取られることでしょう。

 

ところで、通勤電車・近郊列車の車内の様子はどうでしょうか。私は関西に住んでいるため、車内では話し声がよく聞こえます。一方、ヨーロッパ・ロシアの車内ではあまり話し声は聞こえません。乗客はスマホをいじったり、本を読んだりしています。また、一部の国では車内で無料WiFiが利用できます。一方、車内での携帯電話を使った通話は問題ありません。このように、車内の様子を見ただけでも、習慣の違いが見えるので実に興味深いです。

ヨーロッパ・ロシアの通勤電車・近郊列車の注意点

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ヨーロッパ・ロシアの通勤電車・近郊列車で注意すべきポイントは列車本数です。「Sバーン」のような通勤電車ですと、列車本数が多いため、時刻表を気にせずに乗車することができます。

 

一方、近郊列車ですと30分間隔は一般的。ヨーロッパ、ロシアでは30分間隔でも「列車本数が多い」とみなされますから。首都圏、大都市圏から近郊列車を利用する場合は時間に余裕を持たせましょう。一般的に、ヨーロッパ・ロシアは日本よりものんびりしているので、30分間隔もすぐに慣れるとは思いますが。

 

文・撮影/新田浩之