ニューハーフのお姉さんに出会って、見えない自信が生まれ
── こども食堂は、貧困家庭の支援だけでなく、孤食解消や地域の交流の場としての居場所作りの役割もあります。はるなさんが、自分の居場所を見つけられたのはいつでしたか。
はるなさん:中学でいじめに遭っていたころ、知り合いがニューハーフのお姉さんの店に連れて行ってくれたときです。私たちの子どもの頃は情報がなくて、自分らしい生き方をしている人が近くにはいなかった。女の子の友達はいましたけど、「本当は女の子になりたい」ってことは言えなかったですね。
団地で生活していたんですが、すごく狭いコミュニティで。「男らしく」と育てられたので、もし誰かに知られたら、「大西さんとこの賢ちゃん、オカマになるんじゃないの」って噂がすぐ広まったと思います。
学校が終わるとまっすぐお店に行くようになり、自分の居場所を見つけられてからは目には見えない自信がついていったんだと思います。そこからいじめがピタッと止まったんですよね。不思議です。子どもたちには、自分らしいオンリーワンの生き方を自分で見つけてほしいし、ひとりひとりの才能を伸ばせる社会であってほしいと思っています。
善意を受け取れない子どもに出会い「教育は日常に」
── はるなさんはこども食堂だけでなく、被災地の支援などにも尽力されていて、お子さんと接する機会も多いと思います。
はるなさん:ある避難所に物資を持っていったとき、たくさんの方が「愛ちゃん、来てくれたの」って喜んでくれたんです。帰り際も大勢の方がついてきてくれてね。でもそこで、きょうだいの男の子と女の子が、私に向かって「男やろ、気持ち悪い」と言って石ころを蹴ってきたんです。
「いまどき、こういうこと言う子がいるんだ」って驚いてしまって、「そんなこと言ったらダメでしょ」としか言えませんでした。周りの人たちも、ふたりを見ていて。きっと後から怒られたと思います。でもそのとき、親はそこにいなかったんですよ。
私はそのあと、「なんであの子たち、こんなふうに育っちゃったんだろう」ってずっと考えていて。これからも避難所で暮らしていくのに、ひどい子どもだって思われ続けて、かわいそうだなって。なんて言ってあげたらよかったのかなって、今も思ってるんですよ。
── 善意を素直に受け取れない…。何があったんでしょうね。
はるなさん:わからないんですけど、やっぱり身近なところで、人を差別したり何気なく悪口を言ったりしていることが、子どもたちにインプットされちゃうんだと思います。教育は日常にあると思っていて、やっぱりいちばんは親ですよね。知らず知らずのうちに、子どもは親を教科書にしているから、親が子どもに向き合う姿勢ってすごく大事だと思うんです。
今はみんな忙しいし、生活の大変さとか仕事のうっぷんを子どもに当たってしまうかもしれないけど、親は仕事と同じくらいの熱量で一生懸命時間を作って、同じ目線で子どもとじっくり話してほしいと思います。「どうせわかってくれない」って思われる親になったらいけないですよ。そうなると子どもはどんどん離れてしまう。教育してるつもりで、実は子どもと向き合っていなかったという家庭は、きっと多いと思います。
「あんたには無理や」とか、可能性を潰しちゃうのも残念でしかないです。やりたいことがあるなら、やってみなきゃわからないし、その結果、無理だっていいじゃないですか。チャレンジすることも失敗も人生の糧。小さな社会で、傷つきやすくて、友達関係でも悩んで、体も成長していく不安定な時期に、しっかり話してあげられる親になってほしいなと思いますね。