SDGsへの関心が高まる今の時代でこそ「環境への配慮」が当たり前に叫ばれるようになりましたが、高度経済成長を迎えた60年前はどうだったでしょうか。大量生産・大量消費の高度経済成長を迎え、今ほど注目されていなかった当時から、実は時代に先駆けて環境問題に取り組んでいた企業がありました。掃除用品のレンタルでおなじみの、株式会社ダスキンです。その取り組みを知ることで、環境配慮を心がけなければいけない今の私たちにもヒントが見つかりそうです。
年間1億3100万枚もの掃除用品を再商品化「いったいどうやって…」
「掃除用品をレンタルする」という概念を、昭和の時代から日本の家庭に定着させたダスキン。創業後すぐ発売された水を使わずにサッと拭くだけでホコリが取れるクロス「ホームダスキン」は、主婦から「魔法のぞうきん」と呼ばれ、各家庭に「おそうじ革命」をもたらしました。ちなみに、耳なじみのあるダスキンという社名は、「ダスト(dust)=ホコリ」と「ぞうきん」を合わせた造語から生まれたそうです。

この掃除用品のレンタル事業で1963年の創業当時から採用しているのが、「循環型レンタルシステム」。これは、お客さまが使用したモップやマットなどの掃除用品を回収して全国の45生産事業所(工場)へ運送、洗濯・乾燥・仕上げの工程を経てきれいな状態に戻し、またお客さまへ届けるというものです。

回収された使用済みの掃除用品のうち、なんと97.8%が再び商品化されるというから驚き。再商品化が難しい2.2%の商品も捨てられるのではなく、形を変えて再利用されます。例えば、何度も洗浄するうちに破れてしまい家庭では使えなくなってしまったクロスは、識別しやすいように商品の色を変え、油や金属を拭く産業用のクロスに生まれ変わります。
さらに、洗浄する際に使用する水においても、再利用が徹底されています。水と汚れを特殊な技術で分離させて、水は再びきれいな状態へ。汚れは固められ、セメント原料の一部として有効活用されます。モップやマットについたホコリや汚れまでもが捨てられることなく活用されているなんて、掃除をしているときは思いもよりませんよね。

このようにダスキンの掃除用品は単なるレンタル商品にとどまることなく「ものを大切に・くりかえし使う・みんなで使う・減らす・捨てない」という、創業当時から継承されている理念のもと、徹底した「循環型レンタルシステム」の上に成り立っているのです。
環境に優しいだけじゃない!ダスキンモップ&マットの機能
「循環型レンタルシステム」で生み出されるダスキンモップ&マットは環境に優しいだけでなく、コスパやタイパが叫ばれる今の時代の私たちの暮らしにも最適。機能性の高さが認知されており、レンタル清掃用品の家庭市場においてはシェア率約90%を誇るそうです。

その背景には、「ホコリを舞い上げずに吸着する」という、ダスキンならではの「ダストコントール」の技術があります。掃除ツールが多様化している昨今ですが、ダスキンの掃除スタイルは、ほかには真似できないもの。モップについたアレル物質(ダニのフン、花粉)の活動を抑制する効果のあるダスキン独自の吸着剤を染み込ませてあり、からめ取ったほこりをしっかり包み込みます。
(試験方法:吸着剤を塗布した試験用ナイロンモップパイルにアレル物質(コナヒョウヒダニのフン、スギ花粉)抽出液を添加し、24時間後のアレル物質量をELISA法にて測定。ダスキン開発研究所調べ)※実使用の環境や条件により効果は異なります。
これが、ファンを増やし続けている理由のひとつでもあるんです。小さな子どもがいる家庭でのアレルギー対策などにもひと役買いそうですね。


レンタル商品ですが、一部の店舗ではモップ部分を取りはずして専用の封筒に入れ、ポストに投函すれば交換可能です。日中は仕事で不在なので返却が難しいという場合もこれなら大丈夫。洗浄されたキレイな商品が届くので、忙しく働く人でも、清潔な家庭をキープしやすいですね。
「捨てるのは簡単」だけど、環境負荷が大きいから
無駄なものを徹底的に出さない「循環型レンタルシステム」を、半世紀以上つらぬいてきたダスキン。これだけのシステムを運用するには当然、コストがかかります。企業の負担は少なくありません。それでも、環境負荷が大きい「捨てる」という選択をせずに、社会とひとに還元したいという思いで、長い間取り組んできたそうです。

ダスキンはほかにも、そのすぐれた商品を生かし、さまざまな角度から環境に配慮した取り組みをしています。たとえば、富山、石川、福井、岐阜の4県にまたがる白山国立公園では、2007年から外来植物の種子の侵入や拡散を防止するために、登山口や登山道の各所にマットを設置。登山者がマットを踏むと登山靴に付着した外来植物の種子の侵入を防ぐことができ、生態系の保護に役立っています。

「SDGs」というと、「個人では何から始めたらいいのだろう…」と戸惑ってしまう人も多いかもしれません。でも、こういった賛同できる企業の取り組みを知り、そのうえでサービスや商品を選択することが、ひとつのアクションになります。同時に暮らしや心も豊かになるならうれしいですよね。
誰もが日々当たり前にやっている「掃除」にこそ、納得のいくツールを選びたいもの。これからも持続させたい未来のために、今できる一歩を踏み出してみては?
\ アンケートにもご協力ください! /
取材・文/松崎愛香