「ママはわからない」と突き放す、究極の自立支援

住谷杏奈
子どもたちの自立を大切に育てている最中と話す住谷さん

── 娘さんの中学受験の際も、あえて「手出しをしない」スタンスだったそうですね。

 

住谷さん:子どもが小さいころから「勉強に関して、ママはわからない」というスタンスを貫いてきました。実際、わからないですし(笑)。そしたら自然と自分たちで調べるようになりました。最初は公立に行くと言っていたのですが、受験の2か月ぐらい前に「やっぱり受けてみたい」って言いだして。「じゃあ自分で必要なものを調べてやってごらん」って言って娘主体で進めました。

 

── その方針はご自身が育った環境を反面教師にされているとか。

 

住谷さん:私は親がいろいろやってくれたので、ありがたい反面、自分のことがあまりできなかった後悔があります。だから自分の子には手出しも口出しもしない。忘れ物に気づいても、何も言わない。学校で怒られる経験をして、自分で気づくのを待つ。怒らない教育というのもあるみたいですが、わが家ではいっさい通用しません。過保護は自立を妨げてしまい教育にもよくないと私は考えています。教育によくないと思っているので、私が死んだ後に子どもたちにはたくさんの現金を残すつもりはありません。自分の代でお金は使い切って、子どもには「稼ぐ能力」と「生きる力」だけを身につけてほしいんです。

 

── 逆に、親の教えを受け継いでいることは。

 

住谷さん:幼少期から習い事も週7回もやらせてもらって、親にはいろんな選択肢を与えてきてもらいました。「継続」は大事ですが、「合わなかったら辞めて、もっと向いていることを探しなさい」という教育を受けてきたので、私も自分の子どもにはできる限り選択肢を増やしてあげたい思いはあります。「選ぶ力」も人生では大切なスキルになると思うので。

 

子どもたちに「これをやってみたい!」と言われたときに、余計な心配をせずより多くの選択肢を与えてあげられるように、仕事を頑張っている感じです。成人するまでは全力でサポートしたいと思っています。

 

 

ビジネスパートナーの横領、そして自身のメンタル崩壊。そんな修羅場をくぐり抜けた住谷さんの「家族以外誰も信じない」という境地は、冷酷さゆえではなく、自分を守るための切実な知恵でした。

 

2歳児に向かって「空気を読みなさい」と説き、社員教育のように厳しく律する。「お金は自分の代で使い切る」と宣言し、子どもには生きる力だけを遺そうとする。一見突き放したようにも見える潔のよい愛のかたちに、あなたは何を思いましたか。

 

取材・文:加藤文惠 写真:住谷杏奈