人生でいちばん緊張した夫の両親への挨拶で
── そうした日々を経て、2017年に結婚されました。当初は「受け入れてもらえるだろうか」という不安があったと思います。彼の家族と初めて対面したとき、どんな心境だったのでしょう。
佐野さん:つき合って半年ぐらいのころ、初めてご挨拶にいったのですが、人生でいちばん緊張した瞬間でした。「大切に育ててきた息子さんが選んだのが障害を持った私って、どう感じるだろう」と不安でたまりませんでした。
玄関を上がるときも、夫に抱っこしてもらわないと上がれない。その光景をどう思われるのか怖かった。「息子にこんな負担をかけさせて」と思われるんじゃないかなと。だからできるだけ自分でできる姿を見せたくて、肩に力が入りまくっていました。食事のときも「これできるの?どうするの?」って、質問攻めになるだろうって覚悟していたんです。
でも、お母さんが「すごいね。だけどそんなに見られたら食べづらいよねえ、ごめんごめん」って明るく言ってくれて。それ以上、何も聞かれず、普通に他愛もない会話をして、楽しく食事をしました。想像していた反応とまったく違って、拍子抜けするくらい自然で温かかった。ネガティブなことばかり考えていた自分が逆に失礼だったなと思いましたね。
「できることは限られますけど、妻として、女性として彼の心の支えになれるように頑張ります」、そう伝えたら「本当に息子でいいの?」と聞かれて。まさかの返答にびっくりして「むしろ私でいいんですか?」と(笑)。家族の皆さんに祝福していただき、心からホッとしました。
ですが、その安心もつかの間。思わぬところに、最大の壁が潜んでいたんです。