夫のおかげでありのままの自分でいられた

── 実際に会ってみて、その印象はかわりましたか?
佐野さん:やっぱり最初は「すごいね、足で器用に食べるんだ」と驚かれていろいろ聞かれたりするのが普通なんです。でも、彼は違いました。最初から自然な感じで受け入れて、いっさい聞いてこなかったんです。そんな人は初めてでしたね。
後から聞いたら、会う前に友達に相談していたそうで。「その子はいろんなことを言われ慣れているだろうから、自然体で接すればいいんじゃない?いちばん大事なのは、その子に本当に会いたいかどうかだよ」と言われたそうなんです。夫は素直というか、思い悩まないタイプで、「そっか、じゃあ自然体でいいや」と思ったらしくて。
その後、交際が始まって少ししたとき、アパートの合鍵をもらって「仕事が遅くなるかもしれないから先に入ってて」と言われたんです。だけど、それまで自分でドアを開けることなんてなくて。私が戸惑っていたら「じゃあ、どうすればできるか考えるか」と言ってくれて。「ごめんね、そうだよね。障害持ってるもんね」ではなく、やり方を一緒に考えてくれる人だったんです。トイレは踏み台を使えば自分で座れるからと、私の体に合わせて踏み台を手作りしてくれました。
障害に対してただ優しくするのではなく、向き合い方そのものを共有してくれる。そんな彼と過ごすうちに、無理に強がらず、ありのままの自分でいられるようになっていったんです。