結婚に反対する家族に認めてもらうために
── 最大の壁、というのは…?
佐野さん:私の母と姉が、結婚に強く反対したんです。夫に対しても「本当にいいの?責任持てる?逃げるなら今だよ」と。私が傷つくのを見たくない気持ちと、彼の人生を無駄にしてほしくないという思いからでした。
私に対しても「結婚したとして、あなたに何ができるの?」と言われて。せっかく夫の家族は温かく迎えてくれたのに、実の家族に受け入れてもらえない。それがいちばんつらかったです。
── どうやってその状況を覆したのですか?
佐野さん:認めてもらうには、自立する姿を見せるしかないと思いました。だから、彼のアパートの隣の部屋がちょうど空いていたので、1年間ひとり暮らしを始めたんです。ヘルパーさんにも初めてお願いして、実家に頼らずに生活してみました。「自分がどこまでできるのか」「何ができて何ができないのか」をきちんと知りたかったし、家族にもそれを見てほしかった。
その様子を見て、母も姉も「この子は本気なんだ」と感じてくれたのだと思います。そうしてようやく、家族からも祝福されて、結婚することができました。
彼とそのご両親との出会いは、私にとって人生を支えてくれる大切な出会いになりました。今は子どもにも恵まれ、家族と過ごす時間のすべてがいとおしいです。あのとき勇気を出して一歩を踏み出して、本当によかったと実感しています。
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2017年に結婚し、現在は5歳の娘を育てる佐野さん。しかし、出産に対しては反対する声もあったそうです。周囲の不安を払拭するため、さまざまな機関に相談しながら、入念な準備を進め、家族の理解も得られるように。いまでも応援する声があるいっぽう、心ない言葉も寄せられるそうですが、「言葉じゃなくて行動で見せよう」と心に決め、今日も育児に奮闘する様子をSNSで発信しています。
取材・文/西尾英子 写真提供/佐野有美