今日は誰の名前を覚えるか

黙々と帰る日もありました

── その後、テレビの現場にどうやって馴染んでいったのでしょう。

 

木村さん:
できるだけ、自分から人に話しかけようって意識しました。あと、名前を呼ぼうって。ひとりずつ名前を覚えて「◯◯さん、おはよう」って言うだけでもコミュニケーションが取れるかなって。

 

── 確かに距離は縮まりそうですね。

 

木村さん:
舞台では、自分が「木村多江です」と名乗れば、相手も「僕は◯◯と言います」と返ってきたので、そういうものだと思っていたんです。

 

でも、テレビの世界では、ほんの脇役、役名がつかないレベルだと、こちらが名乗っても、「あー、どうも」みたいな感じで流されてしまったことも。「名前、名乗らないんだ…」って、ちょっとびっくりした記憶はあるんです。

 

だから、まずは名前を呼ぶことからはじめようって思いました。

 

まずは名前を呼ぶことから始めたという木村さん

── ただ、テレビの現場だとスタッフの人数もかなり多いですよね。どうやって一人ひとり、名前を覚えていったのでしょうか?

 

木村さん:
現場には、70〜80人くらいのスタッフさんがいますね。撮影によってはもっといるかな。

 

まずは、出演者の名前から覚えるようにして。今日は10人覚えようとか、自分のなかで決めて。なるべく相手の名前を呼んだり、全員の名前を知っていそうなスタッフの方に聞いたり。または、他のスタッフが「◯◯さん」と名前を呼んでいるのを見て覚えていきました。

 

── 名前を呼ばれた人は、嬉しいですよね。今回の取材でも、私たち取材陣のカメラマンにも、ご挨拶をして早々に名前を呼ばれていましたね。

 

木村さん:
それくらいしかできなくて(笑)。5分前にお会いしたばかりでも、せっかく一緒にお仕事をさせていただくことになったし。

 

── 会って間もない人にもすぐ対応されていて。

 

木村さん:
ありがとうございます(笑)。

 

ドラマの撮影現場もいつもハードなんですよ。特に、アシスタントの子たちは、睡眠時間を削ることもしょっちゅうみたいで。側から見ても、「あの人は体力的に辛そうだ」とか、「メンタル的にきついだろうな」って見て取れるんですよね。

 

そんなとき「私にできることは何だろう?」って。

 

笑顔で話しかけるとか、おなかが空いていそうなときに簡単に食べられるお菓子をあげるとか、そのくらいかなって。小さなことですが、1人じゃないよって気持ちを伝えるだけで、みんなが頑張れたらいいなって思います。

 

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PROFILE 木村多江さん

1971年生まれ。主演映画「ぐるりのこと。」では多数の映画賞を受賞する。以降、ドラマ・映画・舞台等幅広く活躍する。

 

取材・文/間野由利子  撮影/坂脇卓也

衣装クレジット:ブラウス・ベスト・パンツ/すべてメイメイジェイ(エスケーシー) イヤリング・リング/ともにヴァンドーム青山(ヴァンドーム青山本店) イヤーカフ/ケンゴ クマ プラス マユ(ヴァンドームヤマダ) ブーツ/ダイアナ(ダイアナ銀座本店)