ドラマ『リング』で‟貞子“役を演じたことなどから「幸薄そう」といわれることがあったという女優木村多江さん。「本当の自分は、ガハハと笑うところもあるし、どちらかというと男っぽい性格をしている」と語る木村さんですが、世間のイメージと実際の自分との間にあるギャップに戸惑ったこともあるといいます(全5回中の3回)。

豪快に笑っても薄幸と呼ばれ 

── ドラマ『リング』の「貞子」を演じられた影響か、「幸薄そう」「不幸が似合いそう」とイメージされることもあったとか。実際のご自身を俯瞰して、ギャップを感じることはありましたか?

 

木村さん:めちゃくちゃありましたね。不幸か不幸じゃないかは、そのときどきで違いますが、豪快に笑っているときもよくありますし。皆さんがテレビでイメージするより、元気かもしれません(笑)。

 

そよ風に吹かれ、東京の街をゆったりと眺める木村さん

── どうしても役のイメージが着きやすいのでしょうかね。

 

木村さん:ある程度はしょうがないんでしょうけど…。でも、幸薄そう以外にも、「おしとやかで、きちんとしている人」と見られることもあって。そうなると、「いや、私何もできないし、どうしよう…」って思います。

 

以前は、なるべく皆さんのイメージを壊さないほうがいいかなって考えた時期もあるんですよ。

 

でも、結局は本来の自分を出すほうがラクだし、自分らしくいられるし。無理しても続かないなって思ってからは、あまり意識しなくなりましたね。

私だけOKが出なくてモヤモヤ

自然体でいきます

── 素の自分を出せるようになったのはいつくらいから?

 

木村さん:2008年に公開された、映画『ぐるりのこと。』に出演したあたりからですね。私が演じた役は、生まれたばかりの子どもを亡くした母親。うつ病を患いつつも、子どもの死を夫婦で乗り越えていく難しい役どころ。

 

正直、オファーがきたとき、少しハッとしたんです。周りの目を気にしたり、自分の感情を抑えたりする部分が、まるで自分と似ているって。

 

── ご自身と重ねられた。

 

木村さん:どこか似ているような気がして。

 

しかし、撮影が始まると、どのカットも、何度演じても監督からいっこうにOKが出ないんです。自分以外の共演者はみんなOKをもらっているのに、私だけいつもOKが出ない。次第に、芝居がダメなんじゃなくて、私自身がダメだって言われている気がしちゃって。どんどん追い込まれた感じがしましたね。

 

── 辛いですね…。

 

木村さん:毎日必死でした。でも、撮影をしながらどんどん役にのめり込んでいって。

 

演じながら、自分も一緒に成長していったような気がします。

 

次第に、自分の本心を隠しながら生きるのはやめようって。徐々に変化していきましたね。