今回は千葉県にある私鉄、流鉄(りゅうてつ)を紹介します。とは言っても、関東圏に住んでいる人でも「流鉄」と聞いてピンと来る人は少ないのでは。流鉄はとても短い路線ですが、懐かしい風景に出会える魅力的な路線です。

そもそも、流鉄とは

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流鉄流山線は千葉県流山市の流山駅と千葉県松戸市の馬橋駅を結び、馬橋駅でJR常磐線に接続します。上野駅から馬橋駅までの所要時間は約35分。そのため、流鉄は首都圏への通勤路線としての役割も果たしています。

 

「流鉄」という会社名になったのは2008年のこと。しかし、路線自体の歴史は古く、営業運転を開始したのは1916年(大正5年)です。関東にある中小私鉄では珍しく、一度も大手私鉄グループの傘下に入らず、独立系の鉄道会社として頑張ってきました。

 

2005年には流山市から首都圏へ直結するつくばエクスプレスが開業。同線の開業により人の流れは変わっているようですが、流鉄は長き伝統を誇りに今日も走り続けています。

昭和にタイムスリップしたような路線

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さっそく、馬橋駅から流鉄に乗車してみました。JR馬橋駅から跨線橋を渡り、流鉄馬橋駅へと向かいます。流鉄の馬橋駅の改札前で驚いたことは交通系ICカードが使えないこと。切符は券売機や窓口で購入しないといけません。まず、切符の購入する時点で、昭和レトロを感じます。

 

しばらくすると、赤色を身にまとった2両編成の電車が入線。前面には「あかぎ」と書かれたプレートが掲げられています。2019年5月現在、流鉄を走っているすべての車両は西武鉄道からの移籍組。それぞれの塗装は異なっており、前面には愛称を記したプレートが貼られています。

 

車内はほとんど西武時代と変わりません。広告も少なく、昭和時代に浸れる環境が整っています。なお、流鉄はワンマン運転のため、車掌は乗務していません。流鉄は全線単線となっており、途中の小金城址駅で電車のすれ違いを行います。どの駅も列車入線時と発車時は車掌がホーム上でしっかり確認。流山駅では駅舎の外に出て、電車が発車することを伝えます。この人間味こそ、流鉄の最大の魅力かもしれません。

 

馬橋駅を発車すること約10分、電車は終着駅の流山駅に到着しました。このまま馬橋駅へ折り返すのはもったいない!ぜひ、流山駅周辺を観光してみましょう。

流山駅横にあるミニ鉄道博物館

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流山駅の隣にある交流スペースの一角には”ミニ鉄道博物館”があります。ここには1949年の電化時に導入されたモハ101形の模型が展示されています。廃車になったのは1979年のこと。モハ101形の後継車は西武鉄道からの転勤組となっています。西武鉄道からの転勤組がデビューした後に、それぞれの車両に愛称を付ける習慣が始まったようです。

 

ボードには歴代の西武鉄道移籍組の車両が美しいイラストで描かれています。他にも地元の人が撮影したと思われる流鉄の写真がたくさん貼られていました。いかに、流鉄が地元の人から愛されているか、よくわかりました。運がよければ交流スペースに流鉄をよく知る地元の人に出会えるかもしれません。もし、流鉄に関して質問があれば、地元の人に聞いてみましょう。きっと、親切に答えてくれると思います。

流山駅構内を撮影するなら駅近くにある跨線橋がおすすめ

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流鉄流山線には車庫はなく、電車の留置・保守は流山駅構内で行っています。流山駅構内も古き良き中小私鉄が残っている貴重なスポット。特に鉄道模型のレイアウトに興味がある人におすすめしたいですね。もし、流山駅構内並びに流鉄の写真を撮影したい場合は流山駅から馬橋方向に少し歩いたところにある跨線橋に行きましょう。跨線橋から流山駅構内の全景が撮影できます。

流鉄を訪れる際には事前にホームページを確認しよう

私は事前にホームページを確認することなく流鉄を訪れました。しかし、今となってはホームページを確認しなかったことに後悔しています。流鉄のホームページには路線概要はもちろん、お得な切符や沿線案内が紹介されています。

 

もし、馬橋駅~流山駅間の往復でそれぞれ1回途中下車する場合は「流鉄流山線一日フリー乗車券」の購入をおすすめします。この切符は大人500円、こども250円で1日乗り降り自由。全駅で販売されていますが、馬橋駅販売分だけデザインが異なるとか。関東圏において電車をあしらったカード式乗車券は貴重といえましょう。ぜひ、次の休日は親子で流鉄に遊びに行きませんか。

 

文・撮影/新田浩之