職場の「ゆるさ」が若者の離職を高めており、新入社員同士の横の関係で仕事を任せることで離職を防げると提唱するリクルートワークス研究所の古屋星斗主任研究員。「もうひとつ解決策があるとすれば、職場の外で人を育てることです」と言います。広がり始めた副業のメリットについて伺います。

古屋研究員

副業、勉強会参加、職場以外での取り組みが大事

── 社会経験の多い新入社員が職場を「ゆるい」と感じて離職してしまうとこれまで伺ってきました。早期離職を防ぐために、できることはなんでしょうか。

 

古屋さん:

職場だけでは育てきれないなか、社員が副業や兼業、ボランティア、学び直しなどの行動を活かせる環境をつくることが大事です。職場で今、労働時間が減るなどかつてほど負荷がかけられなくなっていますが、さまざまなコミュニティ、勉強会などに参加することで、自分で成長していくことが可能になります。

 

職場の残業時間が年々減っていることを示す図

職場内でも大企業ではグループ内部で越境をしているところがあります。大手通信会社では、グループ会社のどことは問わずに若手が横断して、グループを作り、外部講師を呼んで勉強会をするという取り組みが始まっています。

副業を積極的に言える環境を

── 学ぶ機会が増えているんですね。

 

古屋さん:

かつては深夜まで勤務し、家に帰って眠るだけという働き方も多くありました。しかし、今は職場から18、19時には帰れる若手が増えています。平日であっても2、3時間は趣味も含めたいろいろな活動ができます。

 

これまでの新人と比べて時間があるんですね。さらにコロナ禍でオンライン化が進み、勉強会などもオンラインで参加しやすくなりました。こういう場を活用していかないと人材が育たない可能性があります。

 

例えるのであれば、6割までは職場が育ててくれますが、それ以外の4割は自分で学んでいく必要があるのかもしれませんね。

 

悩む新入社員(イメージ)

ある総合電機メーカーの若手社員がSNSマーケターの知見を生かして、地方企業のサイトを副業で立ち上げました。本人にとっては職務経歴書に書けるひとつの経験です。それだけでなく、本当は本業の会社にとっても、ハッピーなんですよね。会社の外で若手が勝手に新たな能力を身につけてきてくれている訳ですから。

 

それを会社が知っていれば、本業と好循環が生まれます。しかし、当人は会社には副業での成果を隠しているんです。副業、学び直しをしてもそれを本業に報告するとは限りません。

 

社会人大学の様子を見に行くと、「会社には内緒で受けています」という人が多数いました。しかしこうした現状は、社員側の問題というよりは組織環境の問題ですよね。

 

例えば、職場ではそういう副業したり、学んだりしている人は仕事が暇だと思われてしまう文化があるんだと思います。それは双方にとってもったいないですし、社員の成長の足を引っ張っていますよね。

 

職場環境が変わり、もう企業の内部だけで社員を育てきれないので、外での成長機会の重要性が上がっているのです。職場の外でのアクションが成長の大きな糧になる時代に入っています。