ハイパフォーマーの新人に適切な対応ができない企業にも課題が
── 希望部署に配属されないと辞めてしまう若手も増えていると聞きますが。
古屋さん:
ある広告代理店で新入社員が辞めました。元々、学生時代からインフルエンサーで、コスメのレビューをしていて企業と取引がありました。そのため、本人はコスメブランドのマーケティングがしたいと言います。しかし、企業はその学生に地方での営業を命じて、2か月で退職したそうです。
企業としてはこれまでの考えで、ひとつのことに固執せず多様な経験を積んで自社の中核を担うような社員になってほしいという“親心”があったのだと思います。ただ、昔とは状況が変わっています。
今の新入社員は学生時代に企業と実際にビジネスをするような社会的な経験を積んでいる方が増えているのです。社会経験が高い人には、やりたいことをやらせてみてはいかがでしょうか。すでに経験がある場でストレッチとなる業務をさせてみて、自分はまだまだ未熟だと気づいたときにはじめて、その会社での具体的なキャリアパスを思い描くのではないでしょうか。
絶対に成功できると思っている分野でも、やらせてみると失敗することもあります。その後、“キャリアを広げる配属”なら納得感が違うでしょう。
今は経験がある人に対して、その経験を無視したり甘くみたりと、ある種“失礼”な配属になっていて、持続的な扱いができていません。かつての「学生時代」からは質的に変化しているのです。それを企業側としては「勘違いした若者だからやめて当然だ」と扱うかもしれません。しかし、ハイパフォーマーである高経験層の若者を使いこなせない日本企業の状態にも大きな課題がある可能性があります。
PROFILE 古屋星斗さん
リクルートワークス研究所主任研究員。2011年一橋大学大学院 社会学研究科総合社会科学専攻修了。同年、経済産業省に入省。産業人材政策、投資ファンド創設、福島の復興などに携わる。2017年4月より現職。学生・若手社会人の就業や価値観の変化を検証し、次世代社会のキャリア形成を研究する。「ゆるい職場」論の提唱者。
取材・文/天野佳代子 写真・画像/リクルートワークス研究所