今年は例年に比べて開花が遅かったものの、日本各地で桜の便りが聞かれる季節になりました。毎年、春の期間限定で販売され、人気を集めるスターバックス コーヒー ジャパンのSAKURAシリーズ。2022年は2月15日から販売がスタートし、特にさくらのビバレッジはすでに完売するなど今年も多くの注目を集めました。いち早く春の訪れを告げる風物詩として毎年楽しみにしているファンも多い商品。どんな点を工夫して開発しているのか、ビバレッジ商品開発チームの林正憲さんに伺いました。

「実は誰もが共通認識できる桜の味は存在しない」

──SAKURAシリーズを桜が咲く時期よりも早く販売を始める理由はなんでしょうか。

 

林さん:スターバックスのSAKURAシリーズは、ひと足早く春を感じていただきたいとの思いから、毎年本物の桜が咲くより少し前のタイミングから販売を開始し、お客様にお楽しみいただいております。

商品本部 コーヒー&ビバレッジ部 商品開発チームの林正憲さん

 

──毎年どんな商品が出るのかを心待ちにしている方も多いですが、いつ頃から商品開発を始めるのでしょうか。

 

林さん:毎年販売している商品ですので、さくらビバレッジのファンのお客様も多く、楽しみにしてくださっている方の期待に応えたいと例年、桜の開花前には翌年の商品のイメージを膨らませ始めています。商品は、毎年変わるコンセプトに合わせて開発しています。

 

実は誰もが共通でイメージできる桜の花の味というものは存在せず、風味づくりには難しさがあるのですが、これまでの販売で培ってきたスターバックスならではの風味や、お客様から期待されている雰囲気を大切にしつつ、一方で過去に囚われない新しいチャレンジを盛り込むことを心掛けています。

昼と夜で表情が変わる桜を初めて表現した2022年シリーズ

──今年のシリーズは例年と比べてどんな点が異なるのでしょうか。

 

林さん:今年のさくらビバレッジでは、新しいチャレンジとして、第1弾で登場した「さくらストロベリー 白玉 フラペチーノ(R)」には、さくらの味わいに白玉と生八ッ橋のもちもち食感を合わせ、味わい、見た目、食感を楽しめる商品に仕上げました。

 

また、ホットの「さくら 咲いた ミルク ラテ」では、フォームミルクの上に、バリスタがさくら色のシェイブチョコレートとチョコレートソースで1点1点満開の桜の木を描き、カップに満開の桜を咲かせました。

写真左、さくらストロベリー 白玉 フラペチーノ(R)と写真右、さくら 咲いた ミルク ラテ(R)(ともに販売終了)

 

第2弾の商品では、夜桜をイメージしてカシスを追加し、甘酸っぱい風味に仕上げるとともに、見た目にも暗闇の中でライトアップされた桜の妖艶な雰囲気を感じられるものにしました。昼と夜で表情が異なる桜を2種類のフラペチーノ(R)で表現したことは初の試みでしたが、多くのお客様にお楽しみいただけました。

さくらカシス ストロベリー 白玉 フラペチーノ(R)(販売終了)

 

これらの商品を、全国約1700店舗の約4万名のパートナー(従業員)も楽しみながらお客様に1点1点大切にお届けしてもらえるような商品に仕上げました。

 

──見た目にインパクトがあるラインナップですね。

 

林さん:ドリンクを受け取った瞬間に、お客様に満開の桜をイメージしてもらえるよう工夫しました。そのため、例年のさくらビバレッジとは第1印象から異なる見た目になるよう、フラペチーノ(R)には生八ッ橋をトッピングし、ラテには満開の桜を咲かせました。

 

さくらビバレッジを毎年楽しみに待っているお客様にも、今年初めて楽しんでくださるお客様にも満足してもらえるような味わいと見た目で、ひと足早いお花見気分と春の到来を楽しんでもらえるよう、その佇まいも大切にしています。

SAKURAシリーズはスターバックス流 日本文化への敬意

──フラペチーノ(R)という言葉もすっかり定着したように思いますが、そもそもフラペチーノ(R)はいつ生まれたものなのでしょうか。

 

スターバックス コーヒー ジャパン 広報:フラペチーノ(R)はスターバックスの商標です。カリフォルニアのあるパートナーの「夏でもお客様の求めるものを提供したい」という強い想いから、1995年に誕生しました。

 

名前の由来は「フラッペ(凍らせた飲みもの)」と「カプチーノ」を合わせた造語から。コーヒーを飲まない人をも魅了するきっかけとなった、今も世界中で愛されるフローズンビバレッジとして親しまれています。

 

さくらビバレッジでも2010年からさくらの味わいが楽しめるフラペチーノ(R)を販売し、大変好評いただいております。

 

──春の定番商品となっているSAKURAシリーズはいつから始まったのでしょうか。

 

スターバックス コーヒー ジャパン 広報:2002年にタンブラーとマグカップの販売からスタートしました。タンブラーやマグカップのグッズ類での販売を展開した後、さくらシフォンケーキなどフードの販売が始まり、2010年2月からビバレッジの販売を始めました。それ以降は毎年、ビバレッジ、タンブラーやマグカップなどのグッズ類、フードと商品数を増やして展開しています。

SAKURAシリーズのタンブラーやマグカップなどのグッズ(一部完売)

 

──春の商品として桜をテーマに開発することになったのはなぜでしょうか。

 

スターバックス コーヒー ジャパン 広報:古来より、桜は日本人にとって春を象徴する花、また日本人の春に対する季節感を形成する重要なものとされており、このSAKURAシリーズは「各国・地域の文化を尊重する」精神から、スターバックス流の日本文化への敬意を表現した商品シリーズとして生まれました。

 

──SAKURAシリーズを定番化し、継続させている理由を教えてください。

 

スターバックス コーヒー ジャパン 広報:桜は、春の到来を伝えるとともに気持ちを高めてくれたり、元気を与えてくれたりする日本人にとって特別な存在かと思います。だからこそスターバックスのSAKURAシリーズに対しても期待は高く、毎年多くのお客様が楽しみにされているため、季節をお楽しみいただく商品として毎年登場しています。

 

色々な表情をもつ桜を毎年ビバレッジで表現しているのでぜひ来年もお楽しみにしていただきたく思います。

 

PROFILE 林正憲さん

店舗でのアルバイトを経験し2003年に社員として入社。店舗営業本部で店長を経験後、社内公募で商品本部フード部に異動し、デザート担当でケーキなど様々な商品の開発を担当。2015年より商品本部 コーヒー&ビバレッジ部 商品開発チーム所属。店舗での接客から得たお客様の反応、好み、ニーズなどを商品開発に生かし、様々な商品を作り出している。

 

取材・文/内橋明日香 写真提供/スターバックス コーヒー ジャパン