「就職浪人する人も」採用基準は意欲と体力

多くの障がい者が活躍しているエフピコダックスは、障がいのある本人や家族が「ぜひ入社したい」と願う憧れの会社で、入社できるまで何年も待ち続ける「エフピコ浪人」をする人も。それだけに選考基準が厳しいのでは──「狭き門」というイメージが先行している同社ですが、岩井さんはきっぱりと否定します。

 

「採用枠がなかなか出ないのは、退職する方が極めて少ないからです。実際の選考基準はかなり大らかなんですよ。文字の読み書きや計算などの知識や技能より、面接で重視するのは本人の『働きたい』意思表示と1日8時間の立ち仕事に耐えられる体力があるかどうかです。そこがしっかりしている方は採用につながりやすいですね」

 

さらに意外なのが、「お金のことがわかる(意識できる)」点を重視していることです。

 

「面接でご本人が『給料はいくらですか?』と聞くと、同伴する親御さんは恥ずかしそうにするんですが、うちとしてはそのフレーズが出たらほぼ採用です。お金への思いはモチベーションの根幹になりますから。仕事は大変ですが、どんなにしんどくても、給料をもらっている、もらったお金で好きなものが買えると思ったら踏ん張れるものです」

「本気で褒めて叱る」でお客様扱いしない

日々、従業員を見守っている課長の中村広太郎さんは、入社して最初の3か月をどのように乗り越えるかが大切だと言います。

 

「立ち仕事ですから、慣れていない方は数時間もすると腰を抑え、うずくまりたくなります。それが毎日続くわけですから、1か月目で体力的に厳しくなり、2か月目は精神的にきつくなり、3か月目に両方が重なってくる。それを乗り越えると、その後はスムーズに定着していくことが多いので、最初の3か月で社員として働くことの厳しさや楽しさをいかに理解してもらうかが重要になります」

 

仕事を覚えるまでの教育について岩井さんは、「最初のうちは、泣いたり暴れたり逃げたりする人には、ヘレン・ケラーのサリバン先生のように手取り足取り教えることもあります。ただ、『これはあなたの仕事ですよ』『あなたが必要だから雇用している』『あなたが会社を支えるんだ』という話を、障がいが重度であっても繰り返し伝えていけば、伝わって、高い意欲で仕事に挑んでくれます」と、話します。

 

岩井久美
エフピコダックス株式会社代表取締役社長の岩井久美さん

仕事を覚えた後も、接し方を工夫しています。たとえば、ほめるとき。「よく頑張ったな」と言って、肩をポンと叩くコミュニケーションでは伝わりません。「すごいじゃん、よう頑張ったな、ありがとう!」と、明るく大きな声でダイレクトに。怒るときも「もういい」は禁物。相手に「もう(頑張らなくて)いいんだ!」と、誤解されてしまうからです。表情豊かに、わかりやすい単語をつないで伝えるよう心がけています。