平均単価1500円、時には2000円を超えることもある一杯の薬膳スープ料理「麻辣湯」。タイパ(時間対効果)やコスパを何より重視すると言われるZ世代が、なぜこの高単価な一皿を求めて行列を作るのか。そこには、「日本人は選ぶのが苦手だからセットを作れ」という外食業界の定石をあえて踏みにじった、石神秀幸さんの計算がありました。効率化を求める時代に、あえて客に「選択」という負荷を強いる。その「不親切」こそが、現代人の飢えを満たす最強の体験価値になった理由に迫ります。
1500円は高いか?Z世代が熱狂する「体験」
── 石神さんが展開する麻辣湯専門店「七宝麻辣湯」を訪れる客の8割は女性。しかも中心は10代後半から20代のZ世代だそうですね。1杯の値段は決して安くない金額だと思われますが、なぜ高額な一品に若者は熱狂しているのでしょうか。
石神さん:麻辣湯は春雨をベースに、たくさんの野菜がとれて薬膳の効果もあるスープ料理。女性にはうってつけとは思っていましたが、Z世代にここまで支持されるとは思っていませんでした。うちは平均単価が1500円以上で、注文によっては2000円超えも珍しくありません。洋服や遊びにお金もかかる世代なので、正直、私も不思議でした。

── 高いお金を払っても味わいたいと思わせる魅力を、麻辣湯が秘めているのは間違いないと思います。
石神さん:麻辣湯の一番の魅力は何か?私は「無限のカスタマイズ」にあると考えています。薬膳スープに入れる「具材を自由に選べる」のが麻辣湯のスタイルであり、楽しいところ。うちでは鶏や豚を丹念に煮込んだスープに、30種類以上の薬膳スパイスを合わせています。そこにトッピングする具材は春雨、野菜、肉、魚介、練り物など常時50種類以上。スープの辛さは0番〜5番があり、以降の辛さは無制限に選べます。味のアレンジも可能で、にんにくなど風味や食感を変化させるアイテムや、定番の麺である春雨を中華麺に替えることもできる。バリエーションは無限大です。
自分の定番を見つけて食べ続ける人もいるいっぽう、体調や気分で今日の一杯を探す人も。そうしてお客さん自身がレシピ開発を行って、日々、味を進化させる。その楽しさが、Z世代にウケたのかもしれません。実際、お客さんが自分の定番がみつかればそれを食べ続けても構いませんし、体調や気分で今日の一杯を探してもらってもいい。じつは私自身でレシピ開発を行っていて、日々、味をブラッシュアップしています。