効率化という「毒」。形勢を逆転させたのは
── 2012年、赤坂に2号店をオープンさせますが、状況は好転しませんでした。
石神さん:目の前でできる課題は何か?そう考え、調理工程をゼロから見直しました。問題は、効率化を見据えた「濃縮スープ」にありました。多店舗展開を前提に味を均一にするため、食品会社に外注して作った濃縮スープをお店で割って使用していたんです。それが結果的に料理の質を下げていた。単純に、美味しくなかったんだと思います。
濃縮スープをやめ、「お店でスープを炊く」というやり方にしました。原点回帰の見直しです。すると、たったそれだけの改善で、売り上げが爆発的に伸びたんです。お店はオフィスがひしめくエリア。一度足を運んでくれた会社員などがランチや夜食のリピーターとなり、口コミでも広がったようで、来客数は日増しに多くなっていきました。
── 期待通り「美味しい、楽しい、体にいい」と認知され、ヒットしたわけですね。
石神さん:そうです。以降、お店でスープを炊くことを徹底して店舗を増やしていきました。フランチャイズ展開も進めて全国的に店舗を拡大し、どこでもお客さんに受け入れられ、麻辣湯ブームを牽引するようになっていたんです。
── お店でスープを炊くのは手間がかかります。店舗運営の効率を悪くするため、マイナス要素といえるのではないでしょうか?
石神さん:たしかに非効率な面はあるものの、「味の決め手」となる工程に対する手間は惜しみません。濃縮スープを使った失敗から、人間の舌が侮れないことを改めて認識しました。わずかでも味を落とすような効率化はやってはならなかった。味のブラッシュアップを求めて、私自身はつねに改良できないか模索を続けています。
── 一方で、運営面での合理化は進めているそうですね。
石神さん:直営店では、コロナが始まる前の2019年から完全キャッシュレスに。接客や調理などのオペレーションも簡略化し、今後、さらに改善していく予定です。