弟の障害を知った娘は「良太は私と一緒やし」

岸田ひろ実 岸田奈美 岸田良太
小さいころから仲よしの奈美さんと良太さん

── 良太さんの成長につれて、気持ちは変化しましたか。

 

岸田さん:実際に良太と生活していると、ただただかわいいんです。首がすわるのも、歩くのも遅いけれど、ほかの子と比べなければ「普通やん」と思いました。

 

良太を見ていたら、小学生のころ仲よくしていたのぶちゃんというお友達を思い出したんです。今思うと、のぶちゃんはダウン症でした。かわいくておもしろくて、いつも楽しそうにしていたのぶちゃんの姿を思い出して、救われました。

 

マンションには同じくらいの年ごろの子どもを持つママ友コミュニティがあって、上の子も下の子もよく一緒に遊んでいました。子育てって、どうしてもほかの子と成長を比べたり、学校の成績を比較したりしてしまいますよね。

 

でも、良太はほかの子と成長のスピードが全然違います。「みんなと比べなくていい」という意識を持てるようになってからは、むしろ子育ては自由で楽しいものになりました。

 

その感覚が、娘の子育てにも生かされて、「みんなと一緒じゃなくてもいい」と思えるようになりました。娘は「ラッキー」と思っていたんじゃないでしょうか。

 

── 娘の岸田奈美さんは作家としてご活躍されています。奈美さんを育てるときに、心がけていらしたことはありますか。

 

岸田さん:私は、奈美に「弟に障害があるから、私がめんどうを見ないといけない」とか、「良太がいるから、やりたいことをあきらめないといけない」とは絶対に思ってほしくありませんでした。「良太のことで責任を感じる必要はない、あなたは自由に生きてほしい」ということは、今も伝えています。

 

だから、小さいころから「良太のことを見ていて」と頼んだこともないし、良太がダウン症だということも話していなかったんです。

 

奈美が5年生になるときに、良太が同じ小学校の支援級に入学することになったので、そのタイミングで話をしました。「良太は私と一緒やし、みんなとも一緒や」と奈美は泣いていました。

 

そのとき、奈美に渡したのが『わたしたちのトビアス』という、ダウン症の弟を兄姉が紹介する絵本です。奈美はその本を読んでダウン症のことを理解したうえで、学校にも持っていき、担任の先生の前で読んだそうです。6年生になったときは、新入生の前で良太のことを紹介したと聞きました。

 

── 良太さんのことを大事に思っていらっしゃるのですね。

 

岸田さん:奈美が、家族のことを書いたエッセイ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』(小学館)はドラマ化もされて、たくさんの方が私たち家族のことを知ってくださいました。私にはきょうだいがいないので、奈美の感覚はよくわからないのですが、2人は今も仲がいいですね。2人とも絶叫マシンが好きで、この前も泊まりがけでUSJとナガシマスパーランドへ行っていました。

 

奈美は昨年結婚しましたけれど、何かと言うと良太を家に呼んだり、一緒に出かけたがるんですよ。良太は、奈美の夫のみずきくんのことが大好きです。