知らない番号からの電話を無視し続けていたら

── 応募の結果、どうだったのですか?
花岡さん:なんと採用していただけたんです。当時51歳、ずっと専業主婦で会社勤めの経験はないですし、韓国語も一般的な語学教室に通っていただけで留学の経験もない。ましてや外国語大学出身でもない。応募書類を出したことに満足して、どうせ書類審査で落とされるだろうと応募したことも忘れて過ごしていたら、「書類審査に通ったので、トライアルを受けてほしい」という電話がかかってきて驚きました。
実は何度も電話をしてくださっていたのですが、知らない電話番号からの着信だからと出ないようにしていたんです。不審に思いながら電話に出たときは「やっとつながりました」と言われました。あと1回電話してだめなら諦めようとしていた最後の電話だったそうです。
トライアルの段階で、翻訳者がつけた字幕を修正して、その理由を書く試験があったのですが、「こんなにおもしろい仕事があるのか!」と驚くほど楽しかったです。ただ問題は、トライアルの回答をつくるのに必須のエクセルの使い方がわからなかったこと。近所のパソコン教室へ行って「私のパソコンにエクセルを入れたいんですけど、どうしたらいいですか?」と聞くところから始まりました(笑)。こんな状態では受からないだろうと思っていたのですが、無事に最終面接まで進んで採用していただきました。
── それまで字幕の仕事をしたことがなかった花岡さんが採用された決め手は何だったのでしょうか?
花岡さん:人づてに聞いた話ですが、言葉に対する感覚が優れていて、ゼロのものをイチにつくり上げることができると評価していただいたそうです。そういえば、スクーリングの際にも林原さんから「どこかの劇団で脚本とか書いてましたか?」と聞かれたんです。
もちろんそんな経験はないわけですが、韓国語のセリフを聞きながらストーリーを追っていくと、頭の中で小人がしゃべり出すように次のセリフが浮かんでくるんです。いま仕事をしていても、最初に日本語のセリフを考えてくれた翻訳者さんに「こういう言い方に変えてはどうですか?」と提案すると、「それが言いたかったんです!」と言われることがよくあります。なので、ただ外国語を日本語にするだけではなくて、こういうキャラクターの人だったら、この状況だったらこう言うんじゃないかな、と想像するのが得意なのかもしれません。