久々の入浴で今までの自分が崩れていくような感覚に
── 手術した直後は、どんな気持ちで過ごしていましたか。
中村さん:手術の翌日、先生から「手術は成功したよ」と言われたので、「また立って歩けるんだな。2週間後の次の試合に向けて治さないと」と思っていました。なのに、1週間たっても身体の状態はまったく戻らない。それで、少しずつ違和感を抱き始めたんです。
── 手術から10日後に、先生から「君はもう二度と歩くことはできません。これからの人生、寝たきりの生活を覚悟してください」と宣告されたと…。かなり衝撃的だったのではないでしょうか。
中村さん:当時は、「そうは言っても、リハビリすればなんとかなるんでしょう?」と楽観的に考えていました。今思うと現実を否定することで、自分の心の状態を保っていたという面はあったと思います。
自分の障害をリアルに実感したのは、入院して1か月たったころ、初めて手術後に入浴したときでした。それまでずっとベッドに寝たきりで、自分の身体を見ることはなかったんですが、看護師さんたちに特殊なベッドに移してもらって、寝たままの状態で入浴したんです。1か月ぶりのお風呂だから気持ちいいだろうなと思っていたら、ジャバジャバと浴槽にお湯が入っている音はするのに、お湯の温かさが全然わからないし、お湯につかっている感覚すらない。これがショックで。さらに、入浴後に看護師さんが上半身を起こしてくれたときに自分の脚が目に入ったんですが、スポーツをやっていて太かった脚が、ガリガリに痩せて骨と皮だけになってるのを直視することになり。その瞬間に、身体を動かすことに誇りを感じていた今までの自分が崩れていく感覚がありました。同時に、あぁ自分は障害を負ったんだと強く実感しましたね。
そこから一気に心の状態が不安定になっていくとともに、体調もどんどん悪くなっていって。毎日熱が出て、食事がとれない状態が続きました。結果的にMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)という菌に院内感染してしまい、重度の肺炎で右の肺の3分の2ぐらいが痰で詰まった状態になり、集中治療室に運ばれて。当時は息ができなくて、本当に死ぬかもしれないと思うくらい、つらかったです。
──「自分の人生終わった」と感じていたそうですが、どういう苦しみや不安があったのでしょうか。
中村さん:振り返ると、比較から生まれる苦しみが強かったです。毎日のように友人たちがお見舞いに来てくれたので、ワイワイ話しているときは元に戻れたような気がしてすごく楽しいんですけど、みんなが帰った後、ひとりの病室でシンとした静けさを感じたとたん現実に引き戻されて。健常者として生活していた事故前の自分と今の自分を比較してしまうし、楽しそうに大学生活を送っている同級生とも比較して、話を聞くのがしんどいときも。友達がキャンパスライフを楽しんでいるのに、かたや僕は自分でTシャツも着替えられないし、食事もひとりでは食べられず、ただ天井を見つめているだけ。「なんで自分がこんな思いをしなきゃいけないんだろう」と苦しみました。