つらい宣告もショックを受けなかった訳は

──「この先、歌手として復帰するのは難しい」という宣告は、オペラ歌手として活躍していた坂井田さんにとって、とてもショックな話だったと思います。

 

坂井田さん:じつは、それほどショックは受けなくて。静かに受け止めました。家族全員が、事実を事実として受け入れたのです。

 

── それはとても意外な反応です。なぜそこまで冷静でいられたのでしょうか?

 

坂井田さん:私も家族もクリスチャンです。「私は神様に愛されている、どんなことがあっても絶対に神様から捨てられはしない」と感じたんです。もしこれまでのように歌えなくなったとしても、私に課せられた使命があるはずだと。それに、私はこれまで目の前のことに全力で取り組んできました。どんな状況になっても、その姿勢に変わりはありません。倒れてから急性期の治療を行う病院に2か月間は入院して、ずっと寝たきりでしたが、未来への不安はいっさいありませんでした。

 

ただ、ちょうど私自身がコンサートを企画していたタイミングで。それが寝たきりで入院している期間とぶつかってしまったんです。どうしてもそのステージには立ちたくて。「歌の練習をしたい」と先生にお願いしました。すると病院内のピアノのある部屋を貸してもらえることになりました。いつも伴奏してくれるピアニストが毎日、病院に来て練習につき合ってくれました。

 

そのときの私は体幹が失われ、体に力が入らず自力で座っていることもできませんでした。体を車いすに縛りつけて練習しました。歌ってみてすぐに、以前とはすべてが変わってしまったことがわかりました。プロとしてステージに立つレベルではなかったんです。「これまでのように歌えない」運命を受け入れつつも、できる範囲でベストを尽くそうと、練習に励みました。

 

坂井田真実子
寝たきり状態で入院中、自身が企画したコンサートに出演するために来日したオーストリア宮廷歌手へ誕生日ソングを