電気工事とお笑い「どちらかひとつとは…」

── それで、結果はどうだったのですか? 

 

亘さん:一発で合格できました。実技試験は終了時間ギリギリまで取りかかってましたけど、資格が取れたときは単純にうれしかったですね。頭の片隅には、ずっと「芸人・亘健太郎」への思いがありながらも、お笑いの世界での「売れる」「売れない」は自分が決められることでもないですから。どこかで別の職業としても食いぶちをつくらないといけないとは思っていたので、ひとつ仕事としてできることが増えたことは安心につながりました。

 

電気工事士としての仕事の際の道具

── 人生における目標や先の方向性が2つあると、一方に集中できないという話をよく聞きますが、亘さんは見事に資格を取得。お話をうかがっていると、頭の切りかえが上手なのかなと思いました。

 

亘さん:芸人としての方向性と、中途半端な気持ちでは取り組めない国家資格の勉強。自分は2つを別ものと考えて取り組んでいましたね。だから勉強をするにあたっての雑念はなかったです。何も見えないところ、つまり、芸人としての可能性にエネルギーを注ぐのは、家族もいる自分にとってはすごくリスキーだった。芸人って賭けなんですよね。だから、電気工事士として仕事につながるかもしれない道が目の前に見えていたら、試験勉強に関しては「いま自分が真っ先にできることはこれ。やるしかない」と、割りきって臨みました。

 

── いまは芸人と電気工事士、どちらが副業なのか判別がつかない状態なのでしょうか。

 

亘さん:工事仕事で家族を食わせていけるようになりましたが、国家資格取得でさらに収入面で余裕ができました。家族を養っている身として考えると、経済的には確実性のある電気工事士の方向に振りきったほうがいいのかもしれないけど、完全に芸人としての自分を捨てる選択もできない。中途半端に両方持っている感覚はあります。いま、芸人としての仕事は劇場メインですね。芸人と電気工事士、仕事量的にもちょうど半々くらいの状態です。本音で言うと、「芸人1本でやっていけたら」という思いがありつつ…ですね。