実母に感謝の気持ちを伝えたら、思いがけない言葉が
── お母さんからの要求を断れるようになったのは、とても大きな転換でしたね。
米田さん:そうですね。その後、里親のおじいちゃんの葬儀がきっかけで里親の孫に再会し、おつき合いすることになって。今の夫はその人なんです。

── 驚きの展開です!里親と同じ苗字になれたんですね。
米田さん:そうなんです。子どものころは、家族だと思っていたのに私だけ苗字が違うのがすごく悲しかったけれど、こうして夢が叶ってなんだか不思議な気持ちです。
そして結婚を機に、母に会いに行くことにしました。結婚の報告がしたかったわけではなくて今、自分が幸せだと思えるのは、母のおかげだと伝えたかったんです。母が私を産んでくれたから、いろいろな経験を味わうことができているので。母が私にしてきたことを受け止める気はもちろんありません。でも、感謝の気持ちを伝えないまま母が亡くなるのは嫌だなと思って。自分のために会いに行くことにしました。
「産んでくれてありがとう」と伝えたとき、母は私の手を握って「苦労をかけたね」と涙を流していました。昔から憎まれ口しか言わなかった母が、そんな言葉をかけてくれたことは、すごくうれしかったですね。母のなかで、何か変わった部分があったのかもしれません。

── 米田さん自身、現在は1児の母として育児に奮闘していらっしゃいます。実親に対して今、思うことはありますか?
米田さん:母自身も子どものころ、私と同じような経験をしてきたんだろうなと思います。きっと母は母なりに大変で、誰かに助けを求めたかった。でも、そのやり方がわからなくて、自分がされてきたことを私にしてしまったんだろうなって。その負の連鎖を止められるのが、里親や養子縁組制度などの存在だと思うんです。
今は、私の母のように「子どもをうまく育てられず困っている実親」をサポートしてくれる支援にはさまざまなものがあります。その支援が、必要とする人にちゃんと届いてほしいなと思います。そして、実親と里親とが一緒になって、子どもを育てていくカタチが増えていくといいなと思います。