不妊治療を経験したからこそ実感する里親の重要性

── 里親、養子縁組里親(※)の話が出ましたが、現状では、養子縁組里親を希望する夫婦が多いのに対して、里親の数はだいぶ少ないそうですね。

※里親と養子縁組里親の大きな違いは、親子関係の有無と養育の目的にある。里親は実の親のもとへ帰ることを前提に、一時的に子どもを養育する制度。養子縁組里親は永続的な養子縁組を目的とし、法的な親子関係を結ぶ。

 

米田さん:たしかに、里親の数がもっと増えたらいいなとは思います。でも、愛情を子どもたちに分けてもらえるのなら、どちらでも素晴らしいことだと思っていて。それぞれの夫婦が自分たちの幸せをいちばんに願って選ぶのがいいと思います。

 

米田幸代
産後すぐのころ、生まれたての長男を抱いて

養子縁組を希望する方は、不妊治療などを経ている方が多いと思うんです。実は、私も子どもがなかなかできなくて、何度も不妊治療を受け、体外受精を経験しました。精神的にも身体的にも金銭的にも大変で、とてもつらかったです。子どもを授かることができないことで、心身ともにこんなに傷つくのだと身を持って知りました。だからこそ、子どもを授かるのが難しいご夫婦には、自分たちの幸せを願ってほしい。そのうえで養子縁組や里親を検討するのはとても素敵なことだと思います。

 

夫婦で意見が分かれることもあると思うけれど、お互いを責めることなく、納得できるというか、幸せだねと思える人生を送るための選択をしてほしいです。ふたりが幸せなら、その幸せが子どもにも伝わって、きっと子どもも幸せになれると思うので。里親制度にはいくつか種類があるので、自分たちに合うものはどれかを知ることも大事だと思います。

 

── 制度を知ることは大事ですね。

 

米田さん:はい。たとえば、私が暮らしている札幌市では2025年の8月から、子育て短期支援事業として「里親ショートステイ」制度(※)が始まりました。自治体によって内容や呼び名は異なりますが、札幌市の場合は最長1週間、子どもを預けることができます。

※保護者の病気や育児疲れ、仕事など、子どもを一時的に養育できない場合に、子育ての負担軽減を目的として実施しているショートステイ。児童福祉施設に加え、里親に預けることが可能に。
 

里親として預かる期間は短いので、比較的ハードルが低いと思います。里親のなかには、赤ちゃんが大好きで乳児を専門に預かっている人もいます。もし里親制度に興味のある方がいらっしゃるなら、近隣の児童相談所に相談したり資料を集めたり、できることから始めてほしいです。

 

取材・文/小松﨑裕夏 写真提供/米田幸代 漫画/いよかん 取材協力/船木 香(むぎのこフォスタリング機関)、KADOKAWA