安全な砂場は「無菌状態」なことではない
── 日本の公園や園庭にある砂場には、柵があって鍵がかけられていたり、シートで覆われたりしていることがあります。理由はなんですか。
どろだんご先生:野良猫の糞尿よけに作られたものです。一時期、猫の糞が原因で公園の砂場に寄生虫が発生しているかのようなニュースがセンセーショナルに取り上げられ、それを受けてとられた対策です。よくよく考えていただきたいのですが、檻のような柵に囲われた砂場で子どもたちが遊びたいと思うでしょうか。
世界中の砂場の調査に行きましたが、柵に覆われたりシートがかけられたりしている砂場は日本と韓国だけでした。ニューヨークの公園では、シマリスが砂場の上を歩いていました。先進国では、それまで敷かれていたゴムチップを剥がして、公園をより本来の自然に近い形に戻そうという動きがあり、森のような場所に遊具が置かれているところが多いです。日本もいずれこのような流れになるのではないかと思っています。

砂場は本来、表に見えていない部分からさらに1メートル掘り下げて、大きい石を詰み、水だけを通すシートを置いて作るべきなのですが、日本の多くの砂場は掘り進めたらすぐにコンクリートにぶつかってしまうことが多いです。雨で汚れが流れるように作れば菌は繁殖しないのですが、コンクリートのプールに置かれた砂場は、菌の温床になってしまいます。これが、砂場は汚いというイメージが生まれている原因だと思います。
── より自然に近い形で公園がある国も多いとのことですが、そうすることで砂場を衛生的に保つことにもつながるのでしょうか。
どろだんご先生:砂場が囲われておらず、砂が日光消毒されて菌が雨で流れるような設計になっています。日本の砂場には全国統一されたレギュレーションがないので、きちんとした基準を設けて、安全に利用できる環境をつくりたいと思っています。安全というのは、無菌状態で子どもたちが過ごすことではありません。危険性があるものは取り除き、日常で触れても大丈夫な菌と区別する必要があります。
── どろだんご先生がつくる公園はどのようなものですか。
どろだんご先生:今、八ヶ岳の林の中に自然環境のなかで遊べる場所をつくっています。砂場を含めて、年齢ごとの遊びもできるような仕組みや工夫を凝らしているので、自然のなかにあるあそび場のひとつのモデルになればいいなと思って頑張っています。自治体の方からも公園づくりのアドバイスの依頼があるのですが、やはり予算の関係などもあって実行スピードは民間のほうが早いです。でも「子どもたちにおもしろい遊びの場を」という思いで依頼をくださる方の思いには全身全霊で応えたいです。
そのためには、主役である子どもたちの意見を聞くことがやはり大切だと思っています。実は子どもたちは「空に浮かんでいるような」とか、大人が思っているほど実現不可能なことは言ってこないんですよ。しっかり現実をみています。それに、子どもは自分たちだけではなく、ほかの世代のこともよくみているなと思います。
去年、福岡で開催した会議では、公園の衛生管理について議論した際におもしろいアイデアが出ました。「出生届を出したら球根をもらえるようにして、それを公園に植えるのはどうか。自分のお子さんの成長とともに公園を大切に思う気持ちが生まれて、公園にゴミを捨てる人が減ると思う」という意見が小学6年生から聞かれました。とても斬新で、的を得ていますよね。公園は、大人たちが机上の空論で作るものではなく、主役はいつも子どもであってほしいと思っています。