「私は家に上げる値しない人間、と思われていたんだと」
── そうかもしれません…。そんな彼とのおつき合いで、自尊心は削られませんでしたか?

住吉さん:ものすごく削られました。「自分は魅力がないんだな」「異性から見て価値がないんだな」と思ってしまって。あとは、「年齢を重ねたことで魅力を失ってしまったのかも」とか…。いろんなことを逡巡(しゅんじゅん)しましたね。
── おうちデートをドタキャンされたこともあったとか。
住吉さん:そもそもつき合ってけっこう時間が経つまで、一度も家に入れてもらえなかったんです。結婚を意識すると、相手がどういう暮らしをしているのか、知りたくなるじゃないですか。いよいよ彼の家で鍋をしようという話になり、ようやくどんな暮らしをしているかがわかる!と思ってうれしくて。
── 初めてお宅訪問とあって、住吉さんの気持ちとしては盛り上がっていたんですね。
住吉さん:そうなんです。鍋の材料をいろいろ買い揃えて、土鍋も自宅から持参し、重い袋をめいっぱい抱えて、彼の家に向かいました。荷物が重すぎてタクシーで移動していたので、タクシーの中から「もうおうちに着くけど、ピンポンを押せばいいですか?」とLINEしたんです。でも、全然既読にならなくて。「あれ?」と思い、あわてて何回も電話したんですけど、それも出てくれなくて。何回目かでようやくつながったんですが、そのとき彼はすでにタクシーで仕事に向かっている途中だったんです。結局、その日はキャンセルになってしまいました。
── 彼としては「家が散らかっていて部屋に上げるのが恥ずかしかった」といった事情があったのでしょうか。
住吉さん:というよりも、私は家に上げるに値しない人間、と思われていたんだと思います。でも…今はもう、さっぱりご縁のない方だったんだなと思って。謝ってほしいという怒りも特になく、むしろ「エッセイのネタを提供してくださってありがとうございます」くらいの気持ちです(笑)。