ダメージで落ち込んだ心を癒やした「初恋の人のひと言」
── 41歳まで3年間つき合ってお別れしたそうですね。どう立ち直っていったのでしょうか。
住吉さん:精神的に相当ダメージをくらっていたので、本当に少しずつ回復していった感じでした。ただ、いろんな偶然が重なってテレビ番組を通じて初恋の彼と再会し、穏やかな時間を過ごせたのは大きかったですね。「こんな世界もあったんだ」と少しずつ心が癒えていったんです。
── 小学生のころシアトルで出会った人に、番組の企画で再会したんですよね。
住吉さん:そうなんです。小学校5年生の夏休みに、さよならも言えないまま突然家族で日本に帰国することになり、それ以来、連絡を取っていなかったので、私は正直、忘れられていて当然の存在だったと思います。それなのに彼は「あのとき、どうしたんだろうと思ってたんだよ」と言って、私を気にかけてくれて。とても健全に、古い友人として今の私に興味をもちながら接してくれました。そのことが、本当にうれしかったんです。
彼のそのひと言で「私って、覚えてもらうにたる人間だったんだ」と思えました。そこから一歩一歩、心が回復していった気がします。「今までどうしてたの?」「どうして今の仕事を選んだの?」と興味を持って聞いてくれたことも、一つひとつが驚きでした。いたって普通のことかもしれないけれど、あまりにも前のモラ彼との関係で、自分に魅力がないと思い込んでいたので…。
── 既婚・未婚に限らず、女性って年齢を重ねるごとに、異性から関心をもって自分について質問される機会自体が少なくなりますよね。そういう意味でも、心が温まる再会だったんでしょうね。
住吉さん:そういう女性の気持ち、すごくわかります。男性って自分に興味のないことは質問しない人が女性より多い気がしていて。私自身、仕事の飲み会や友達同士の飲み会で集まったときも、誰からも興味を持たれないなぁと感じて、「自分には価値がないからなんだ」と思ってしまっていたんですよね。
だから、再会した彼とのやりとりで、ほんわか温かい気持ちになって、すごく癒やされました。彼はすでに結婚していたのですが、家族の話を聞くのもうれしかったですし、とてもありがたい再会になりました。
── この出来事がそれまでの婚活を見直すきっかけになり、結果的に現在の旦那さんとの結婚にもつながったそうですね。
住吉さん:彼との再会で、恋愛においてどういう方と仲を深めるべきか、という視点が変わったんですよね。婚活って「そんな人いる?」みたいな高すぎる理想を掲げがちですが、そんな人を探しても出会えるはずがないんですよ。それより、一緒にいるときに「こういう私でいたい」とか「こういう関係性でいたい」と思える相手を見つければいいんだな、と。初恋の人と再会したときのように、たいした話をしていないのに安らいだ気持ちでいられて、カッコつけずに会話できる。そんな自分がいいな…とかね。そういう視点に着目して相手との関係を追求すると、恋愛って変わるんじゃないかな、と思うようになりました。

── 相手がいかに魅力的か、というよりも、相手と自分の関係性に着目するんですね。確かに、若いときにはなかった視点かもしれません。
住吉さん:若いころは女子トークで「背が高い人がタイプ」「スポーツ好きな人がいい」なんて言い合うじゃないですか。それって、外から鑑賞している相手のことであって、自分との関係性が生まれる前の話で。たとえば「才能がある人に惹かれる」という人は多いと思います。卓越した才能をもつ方に出会ってときめくけれど、当然そういう人は、その世界に没頭できる人。だからこそ才能が育っているわけで、「あまり自分のほうを見てくれないかも」ということは織りこみ済みでつき合わないといけない。でも、若いときって、そこに気づかずに理想を語りがちなんですよね。
でも、恋愛も人間関係のうちです。若いうちに失敗を恐れずにぶつかって、喜んで、泣いて、悲しんで。そのことで、人として成長できたんです。今の夫と一緒にいて、なにげない幸せを大切にできている自分にとって、当時の経験は大切だったと思います。
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今の旦那さんと出会い、めでたく結婚した住吉さんでしたが、子どもを持つことは女性の幸せという思いがあり、4年間の不妊治療を経験。当時は「気持ちのうえでは毎日が低空飛行だった」といいます。悩んだ末に1年間治療を休むことで気持ちが整理でき、不妊治療の卒業を決意。今は旦那さんと愛猫たちとの暮らしを楽しんでいます。
取材・文/市岡ひかり 写真提供/住吉美紀、講談社