気づかないうちに静かに亡くなった母の最期

── お母さんはどんな最期だったのでしょう。

 

藤さん:ある日、ヘルパーさんと自宅の台所で打合せをしている間に、いつのまにか亡くなっていました。だから、息を引き取る瞬間に手を取って見送る、なんてドラマのような感じではなくて。でも、自宅で最期を迎える人って、そういうことが多いらしいですね。病院だと隣に座ってずっと顔を見ているから最期を看取ることもできるけれど、「自宅の場合は家事や生活でやることがあるから、亡くなる瞬間に立ち会える人はなかなかいない」と言って、看護師さんが励ましてくれました。

 

介護中は藤さんがお母さんにネイルを施し気分をアップ!

急に息を引きとるなんて思ってないから、喪服の支度もきちんとしていませんでした。喪服を着るなら当然、半襟をつけなければいけないけれど、私にはできません。そのとき家にいたヘルパーさんと看護師さんに聞いても、誰もつけられないと言います。「どうしよう」と言いつつ喪服を開いたら、半襟がついているじゃないですか。知らないうちに母がつけてくれていたんですね。

 

その日は仕事があって、母を置いて出かけました。撮影が朝の4時までかかり、家に帰ると母はすっかり冷たくなっていました。撮影中は目が腫れてしまうし、みんなに心配かけるのもよくないから、ずっと泣いちゃいけないと思ってこらえていたけれど、そのとき初めて泣きました。