やっと見つけた「本当にしたかったこと」

── 抗がん剤治療をしている間もSNSの更新を続けていました。どんな思いで投稿をしていたんですか。

 

希良梨さん:病気に向き合うなかでSNSは、私の決意表明や、はけ口になってくれていた存在でした。苦しみ続けてきた過去が誰かの役に立てていることがわかって、病気になった自分を許せるようにもなりました。

 

希良梨さんと難病と戦う女の子
難病と戦う10代の女の子と希良梨さん

みなさんとお話ししていて思うのは、実は近い存在である家族や親しい友人には話しにくいことがあるということです。心配をかけてしまうと思うと、本音はなかなか言いにくい。でも、親も子もそれぞれに思いを抱えて、家族で病気と戦っているということもわかりました。私もそうでしたが、母や友人に話せない弱音も、病院の看護師さんたちには聞いてもらっていました。病気の方だけでなく、自分ひとりで抱えて込んでいる方のメンタルケアができたらいいなと思っています。

 

最近ようやく、私が本当にしたかったことは、困っている方に寄り添うことだということがクリアになってきました。人に話して、話を聞いてもらうことで気持ちが癒されていきます。アロマのハンドマッサージなどもさせていただきながら、トークセラピーという形で、病院やご自宅などに伺わせていただいています。

 

── これまでも直接ファンの方と交流されていましたね。

 

希良梨さん:もともと私はファンの方と距離が近く、これまでもいろいろな話を直接させてもらっていました。でも、海外で過ごしていた時期が長かったので、日本人が抱えやすい心の孤独についてきちんと向き合えていなかったような気がしています。自分が病気を経験して思うことは、人は本当にささいなことがきっかけで、心が元気になれるということです。誰かに話をして、寄り添ってもらえるだけで、前向きに物事を考えられると思っています。それに、自分が病気になったからこそ知れたことがたくさんありました。経験は宝ですね。

 

── 今後どのような人生を送っていきたいですか。

 

希良梨さん:病気を経験したことで、困っている人の役に立ちたいという思いが強くなりました。今、何かつらい状況にある方も、長くは続かないと信じて絶対に諦めてほしくないです。ステージ3のがんと告知されたとき、「私、死んじゃうのかな」と漠然とした不安に襲われました。抗がん剤治療は、途中で投げ出しそうになるくらい追い詰められていたときもありましたが、それを乗り越えて今があります。生と死について考え、向き合い続けた1年でしたが、今は心穏やかに、自分らしく生きていければそれだけで幸せだと思えるようになりました。これからは新たな人生の始まりだと思っています。今までの経験を活かし、人との出会いの場や寄り添える場所を作って、人の役に立てるような活動をしていきたいです。

 

取材・文/内橋明日香 写真提供/希良梨