俳優やアーティスト活動をしていた希良梨さんは、先月、芸能界の引退を発表しました。がんの闘病生活を通して変わった価値観と今後についてお話を伺いました。(全3回中の3回)
自分のなかで区切りを
── 去年、子宮頸がんの再発が発覚し、その手術後に骨盤リンパ節への転移が判明しました。副作用と闘いながら抗がん剤治療を行っていた、この1年を振り返っていかがですか。
希良梨さん:自分と向き合い続けた日々でした。なぜ私がこのタイミングで病気を経験しなければならなかったのか、ずっと考えて続けていました。いつなんどき、誰にでも起こりうると言ってしまえばそれまでなのですが、物事には絶対、意味があると思っています。これからは、私にできることは何かを考える人生にしたいと思っています。

── 抗がん剤治療を終え、先月、芸能界引退を公表されました。
希良梨さん:これまで私を育ててくれた芸能界と、お世話になった方には感謝の気持ちしかないのですが、芸能界という枠にとらわれず行動してみたいというのが率直な思いです。治療という試練を乗り越えたあとなので、何か自分のなかで区切りをつけたかったというのもあります。一度ドアをきちんと閉めないと、新しい扉は開けないような気もしていました。
10歳で何もわからないまま芸能界に入り、「自分にはこの場所しかない」と思ってがむしゃらに働きました。20代で子宮頸がんを患ったことをきっかけに日本の芸能界から距離を置いて。海外で仕事をして、国際結婚、出産、子育て、離婚を経験して、再び病と向き合うことになりました。でも、病気を繰り返したからといって、決して振り出しに戻ったわけではありません。たくさんの出会いや気づきがありました。これからは誰かが笑顔になるようなことを活動の軸にしていきたいです。
── 現在は、依頼を受けた方の相談を受ける活動をされているそうですね。
希良梨さん:SNSを通して、重い病気で闘病中の10代の娘がいらっしゃるお母さまからメッセージをいただいたことがきっかけでした。どのように娘を支えてあげたらいいかと相談を受けたんです。やりとりをするなかで「病気の乗り越え方を教えてほしいので、ぜひ娘に会ってほしい」という依頼を受け、娘さんに会いに行きました。娘さんから、闘病中の私のSNSを見て励まされたという話を直接伺って。話をしていくうちに、今では私を「なくてはならない存在」だと言ってくれています。こうやって発信し続けてきたことが、誰かを救えていたということがわかって、本当にうれしかったです。
『GTO』をご覧になっていた同世代の方から相談を受けることもありますし、10代の方から直接連絡をいただくこともあります。病気を抱えている方は、どんな支えが必要で、どんな励ましをしたらいいのか、それに周りの方がどんな配慮をしたらいいのか、自分が経験した今だからこそ伝えられることがあると思いました。きれいごとかもしれませんが、私にしかできないことがあるんじゃないかと。私の幸せは、人に寄り添っていくことで、その結果、人にも自分にも笑顔が増えるということを実感しました。