つらさが限界に達し「いったんリセットしたい」
── 6回予定していた抗がん剤治療を、いったんストップしていたことがあったそうですね。
希良梨さん:抗がん剤治療は、4泊5日の入院で3週間に1回のペースで行っていました。入院中は元気でも、退院後の副作用が本当につらかったです。起き上がれないほどのだるさに加えて、しびれや関節痛、吐き気やふらつきなどもありました。今までの人生で味わったことのない症状で、あまりのつらさから「死にたい」と思うときもありました。
4、5回目のときがピークにつらく、「もう治療は辞めよう」と思いました。途中でギブアップする方も実際にいらっしゃるそうです。でも母から猛反対されて。「最後まで続けないと、再発してしまったときに絶対、後悔するよ」って。でも、気持ちがもう治療には耐えられないというところまで来てしまっていて。あたたかく素敵な医療チームに恵まれているのに、病院に行くことも怖くなっていました。
── その後、どうされたんですか。
希良梨さん:先生に相談して、「そんなにつらいのなら1回、少し間を空けてもいいよ」と言われ、残りの治療に挑む前に、少しの時間、自分の頭をクリアにすることを優先したいと思いました。副作用は個人差が大きいですし、これから治療をする方を怖がらせるつもりはまったくないのですが、もともと痛みに弱く、私の場合は限界に来てしまっていて。治療を少しお休みすることにしました。
── 再び治療に向き合うまでの間、どう過ごしていましたか。
希良梨さん:自分の好きなことに没頭しました。大好きな友人に会ったり、出かけたり。入院中はネイルをとっていかなければならないのですが、短い間でも大好きなネイルをつけて。あとは、自分の心が落ち着くような言葉を探すために本を読みました。日本の芸能界を離れたあと、英語や中国語、スペイン語を学んだのですが、まだ日本語に翻訳されていない本に、自分で訳をつけるのが好きなんです。「言葉をいくつか話せると、物事をいろんな面から考えられる」という話を聞いたことがあるのですが、本当に言葉に救われました。
自分を励ましてくれる言葉を探して、見つけて、それを心に留めておくという作業が無心になれて、癒されました。治療再開までの期間は短かったのですが、再び治療に向き合う覚悟を決めるうえで、私には必要な時間だったと思います。予定していた6回の抗がん剤治療を終え、先日のCT検査では転移もなくホッとしています。経過観察で通院する日々は続きますし、体調も決して万全というわけではないのですが、治療を終えた今は気持ちの面では清々しく、やりきったという達成感があります。
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抗がん剤治療を終えたあと、芸能界の引退を発表した希良梨さん。「これからは芸能界という枠にとらわれずに生きたい」と話すその背景には、病気と向き合い、さまざまな葛藤を経て見出した本当にやりたかったことを叶える人生にしたいという思いがあるそう。今後は、さまざまな悩みを持つ方の心のケアをしていきたいと話してくれました。
取材・文/内橋明日香 写真提供/希良梨