俳優として活動していた希良梨さんは、6回に及ぶ抗がん剤治療をいました。治療の前に訪れた被災地での経験と外国人留学生との交流が、治療に臨む希良梨さんに大きな影響を与えたそうです。(全3回中の2回)

病気のことで頭がいっぱいだった私に

── 去年、子宮頸がんの手術をしたあと、骨盤リンパ節に転移していることがわかったと伺っています。抗がん剤治療を始める前に、能登半島地震の被災地を訪れる機会があったそうですね。

 

希良梨さん:抗がん剤治療を始めることが決まって、怖さで気持ちが落ち込んでいる時期でした。そのとき知人から、能登復興プロジェクトの一環で、地震の被害を受けた場所の視察に誘われたんです。今まで、被災地を訪れた経験がなかったのですが、「私に役に立てることがあるなら」という思いで参加しました。

 

希良梨さん
能登半島地震の被災地を訪れた希良梨さん

── 現地でどのような活動をされたんですか。

 

希良梨さん:地震の被害を受けた製塩所や役場などを訪れました。移動中の車内からも、家や建物が倒壊している様子が目に入って、そのショックで胸が苦しくなりました。実際に現地に足を運んではじめて、災害が多い日本では決して人ごとではないという思いが強くなりました。

 

みなさん大変な思いをされているのですが、行く先々で「GTO見てました!」とか「来てくれてありがとう」と声をかけてくださって。それにこういうときこそ、改めて日本人らしさがにじみ出てくると思いました。避難所で物資の配布がある際には、列を作って並ぶ。ホテルや民間の会社、ボランティアの方が進んで炊き出しを行ったり、物資を提供したりする。日本では当たり前とされていることも、海外の方からすると、信じられないような光景だと思います。

 

── これまで台湾やメキシコをはじめ、さまざまな国で生活された経験がありますね。

 

希良梨さん:自分にできることはなんでもするという日本人の姿勢を改めて目の当たりにしました。今は円安もあと押しして、たくさんの外国人が日本に旅行に訪れていますが、きっとこの日本の素晴らしい文化が広まっているからだと思います。いろいろな国で生活してきましたが、やはりいちばん好きな国は日本なので、日本の素晴らしさを世界に伝えていける活動がしたいですね。

 

── 日本で働くために日本語などを学んでいる外国人留学生とも交流をされたそうですね。

 

希良梨さん:縁あって、ミャンマーからの留学生と会う機会がありました。日本で働くための訓練をしている学生たちに、日本語を教えたり、日本の文化について紹介したりしました。たとえば宿舎で生活するにあたって、布団は敷きっぱなしではなく畳むとか、敷く際の向きや配置なども日本独特のものですよね。訓練の合間の気分転換で、一緒にスキー場に行ってソリ滑りも楽しみました。

 

海外で生活していた経験があるので、別の土地で生きることの大変さがよくわかります。自分で選んだ道であっても、ホームシックになることも理解できます。自分の国を離れて頑張っている学生たちの姿を見て、元気をもらえました。

 

抗がん剤治療の前に能登半島地震の被災地を訪れ、外国人留学生と話す機会があったことは、偶然だとは思えないんです。それまで、病気のことで頭がいっぱいだったのですが、「大変なのは自分だけではない」と思うと、前向きに治療に向き合おうという気持ちになれました。それに、「まだまだ私にはできることがある」という思いも強くなりました。