間借りで店を開くも「客を2時間待たせてお金を投げつけられ」
── 10年ものあいだ、ビリヤニを食べたい人を募り、材料費だけ払ってもらってビリヤニを振る舞う「ビリヤニハウス」を主宰されていたそうですね。

大澤さん:インドでビリヤニに出会ったのが、2009年の末。2010年に帰国して、ビリヤニを食べたいと思ったのに日本じゃ全然食べられる店がなかったんです。あちこちのカレー屋に聞き回ったら、貸し切りだったら作れるよっていう話でした。作るのがすごく大変だからお店では出せないという状況がわかり、じゃあ自分で作ろうと思ったわけです。当時はコミュニティサイト「mixi」で、ビリヤニのコミュニティを見つけて、そこにいる方々に「ビリヤニのイベントをやるので来てください」って声をかけまくったんです。Twitterでビリヤニのことを投稿している人全員にDMを送ったりもしました。
── その情熱が素晴らしいです。
大澤さん:それだけ暇だったってことですけどね。あちこちでビリヤニパーティを開催して、日本ビリヤニ協会まで立ち上げちゃった。それが高じて、インド料理店に間借りしてビリヤニのお店を始めたんです。ただ、始めてみて、お店として成立しないことを痛感しました。営業時間を18時から21時としていたんですが、18時に来る人なんて誰もいないんですよ。
── 一般的な社会人だと、たしかに18時来店は難しいかもしれません。
大澤さん:いちばんおいしいのは炊きたてなのに!19時、20時くらいに友達や飛び込みのお客さんが集まり出す感じだったので、ある程度の人数が集まってから作るようになりました。あるとき、飛び込みで40代ぐらいのご夫婦が来店されたんですが、その日はお客さんの集まりが悪かったので炊く時間を遅らせて2時間ぐらい待たせたらブチ切れられてしまい…。勉強代ね!ってお金を投げつけられて、このやり方は飲食店には向いていないんじゃないかと悩みました。めちゃくちゃ試行錯誤していて、1日23時間ぐらい働いていたこともあったと思います。
── ええ!そこまで気力体力がもつとは信じられないです。
大澤さん:体はどうにか元気だったけれど、自分のやり方は飲食店には合っていないのでは?とずっと悩んでいました。それで、シェアハウスで食べたい人にだけ無償で作る方法を思いついたんです。友達を誘い、キッチンが広い家を借りて。間借りのビリヤニの店は途中からビリヤニ仲間のジョニーとビリヤニ太郎に任せることにして、僕自身は家、つまり「ビリヤニハウス」でビリヤニを作りまくる日々をスタートさせました。
自分の家だからランニングコストはかからないし、若くて時間がある人たちがいるから、僕がビリヤニを作ったら「待ってました」って感じで食べてくれる。材料費が集まればいくらでも作りたい放題だったんですよね。
でも、コロナ禍で大勢で食べてもらうことができなくなってしまいました。特に「三密」が嫌われていたときでしたから、自分がやっていることを否定されたというか…それですっかり落ち込んで、だいぶ苦しんだんです。