沿岸部の壊滅状況を知り「自分も力になりたい」と
── その後はどうなったのでしょうか?
佐藤さん:翌日の3月12日には花巻市内の停電が解消され、夜になると状況が少しずつわかってきました。助産師仲間たちのメールから、岩手県や宮城県の大津波、福島県の原発事故など、大変なことが起きていることが見えてきて。
その後、医師や助産師たちとのメールのやりとりで、もともと産科の統合で出産受け入れが減っていた沿岸部が壊滅状態になっていることを知りました。「妊婦さんたちが内陸部へ搬送されてきた」という情報も入ってきて。仲間が「自分たちも被災しているから移動は難しいけれど、せめて沿岸部から避難してきた人たちを何とか助けよう」と動き始めたので、私も何か力になりたくて。娘をおんぶし息子の手を引いて、搬送されてきた妊婦さんの産前産後のお世話をするボランティアを始めました。

PROFILE 佐藤美代子さん
さとう・みよこ。1978年岩手県盛岡市出身。2001年より岩手県立久慈病院、東京の矢島助産院で助産師として経験を積んだ後、2007年に花巻市で助産院開業。2011年、花巻市の被災妊産婦受け入れ事業を立ち上げ、その活動を2017年、特定非営利活動法人まんまるママいわてとして法人化し、代表理事に就任。岩手県花巻市・北上市・釜石市・大槌町を中心に、妊産婦の産前産後を支えている。
取材・文/高梨真紀 写真提供/佐藤美代子