「介護は家族が全力で支えるもの」といった考えに罪悪感を持たなくても、家族の危機になりえると話すのは、認知症の父親を看取ったタレントのハリー杉山さん。頼った施設やヘルパーの方から大きな学びもあったといいます。(全5回中の2回)
1日中介護に向き合うと心身が疲弊していくだけ
── 認知症と向き合うことになったお父様は、2015年から介護施設に入居されたそうです。ハリーさんの生活はどのように変わりましたか?
ハリーさん:それまで、僕も母も24時間体制で介護をしていたので、休む時間を持てるようになりました。仕事のパフォーマンスも向上し、一人ひとりのクオリティオブライフも上がったんです。もし、父が介護施設に入居せず、ずっと在宅介護をしていたら心身ともに疲弊し、家族崩壊していたでしょう。他の人の手を借りることで救われました。
一緒に暮らしていたときより、物理的に離れるほうが心の余裕が生まれ、父にも優しく接することができるようになったんです。もしかすると現在、在宅介護をする人で施設に預けることに罪悪感を抱いている人もいるかもしれません。でも、家族だけで抱えるのは酷です。家庭崩壊の危機さえあります。「人の手を借りることは悪いことではない」と、声を大にして言いたいです。
もちろん父と離れて暮らし始めると、さみしさや悲しさもありました。だから週2~3回は会いに行き、いつも2~3時間は一緒の時間を過ごし、ときには外出を楽しみました。プロのヘルパーさんが接する様子を見て、「こういうふうに接すると、介護される当事者も安心できるんだな」と、思うことも少なくありませんでした。
── プロのヘルパーさんの対応で、心に残ることはありますか?
ハリーさん:歩行のサポートの仕方、食事の介助、話しかけ方など生活全般で、勉強になることが多かったです。なかでも、いい意味での「割りきり」の大切さを学びました。それまで僕の引き出しにはなかったものでした。在宅介護していたときは、たとえば父のマッサージでも効果を感じられるまで何時間も向き合っていたんです。
それに対し、ヘルパーさんはひとりで何人もの利用者の方を介護します。業務を行うため、わりとサバサバしているんです。食事の介助などでも「今日これ以上食べるのは難しそう」と判断すると、ある程度食べた後に引き上げます。最初は、その様子をクールに感じていました。でも、「できること」「できないこと」の判断を瞬時にすることで、多くのタスクに取り組めると気づきました。疲れ果てるまで向き合うのが、必ずしも正解というわけではないと学びましたね。