2年半休んだことで見えてきたスノーボードへの思い

── そう感じられるようになったきっかけは、なんだったのでしょうか?

 

竹内さん:平昌五輪が終わってから、「私は本当にスノーボードをしたいのだろうか」と自問自答しました。でも、心の底から「雪上に戻りたい」気持ちにはなれなかったんです。

 

ところが、2020年の初めに、友人たちと訪れたスキー場で、競技を忘れて無邪気に楽しんでいるうちに、「滑ることってこんなにおもしろかったんだ!」と、スノーボードを始めたころの純粋な気持ちが蘇ってきて。

 

この楽しい気持ちをもっと競技につなげておけばよかった。大好きで始めたスノーボードをこんな気持ちのまま、終わらせるなんて嫌だなと。

 

私にとってスノーボードはかけがえのないもので、最高の職業だと改めて思いました。そこからは自分が楽しむために滑ろうと心に決めて、復帰をしました。

 

2年半、休んだことでイチからの出直しになりましたが、これまでのように追われる立場でなく、挑戦者になれたこともすごく新鮮でしたね。

 

── 心から楽しむ気持ちをとり戻し、挑戦者として復帰を遂げたのですね。向き合い方が変わったことで、竹内さん自身にどんな変化があったのでしょうか?

 

竹内さん:自分の気持ちを素直に伝えられるようになりました。たとえば、メディアに「どんな五輪にしたいですか?」と聞かれたら「自分のために楽しみたいです」と胸を張って答えられるように。それがすごく心地よく、解放された気持ちになりました。

 

── そうした発言は、これまでしづらかったですか?

 

竹内さん:やはり日本では「自分自身のために」と言うよりも、「応援してくださる皆様のために、少しでも勇気や感動を与えられるように頑張ります」という模範回答がよしとされる文化や風潮がありますよね。

 

でも、そうしたなかで、自信を持って「自分自身へのご褒美として滑りたい」と言うことができ、それがマイナスイメージにならなかったのは、長い競技生活で蓄積してきたものがあったからかなと思っています。