「女性に適した働き方」ではなく「この人に適した働き方」の視点で。一人ひとりが主体的にキャリアを築いていける働き方へ
江嵜可奈子さん/2008年入社。グループ人事部人財開発チーム所属
——佐々木さんと江嵜さんも、子育てと仕事を両立しているとのことですが、育児と仕事との両立で活用されていた制度はありますか?
江嵜さん:
「時間単位の年次有給休暇制度」はよく利用しています。有給休暇が年間20日付与されるのですが、その内5日分は1時間単位で利用できる制度です。
たとえば、子どもの体調不良で保育園から呼び出しがあった時、「10時には退社しなければいけないけど、全休にするものもったいないな」という場合に、午後半休にプラス2時間分の有給を組み合わせて使用しています。それまでは全休にするか、フレックスを利用する場合には別の日に残業するなどの調整が必要だったので、勤務時間も個人の状況に合わせて柔軟に調整しやすくなったと感じています。
この制度は子どもがいる社員限定ではなく、全社員対象なので、それぞれの使い方で活用しています。
佐々木さん:
現在、オリックスの定時は9〜17時で所定労働時間は7時間なのですが、2017年3月までは終業時間が17:20でした。この20分が結構大きくて、「定時が17:20だと、保育園のお迎えに間に合わないから」という理由から時短で働いている社員も多くいました。定時が17:00に変わり、お迎えに間に合うようになったので、時短ではなくフルタイムで働ける女性社員が増えましたね。給与明細から時短分のマイナスもなくなりますし、社員のモチベーションアップにもつながっていると思います。
——所定労働時間が20分短縮になり、育児と仕事を両立する社員のモチベーション面でも好影響が出ているのですね。
江嵜さん:
2016年にCEO直轄のプロジェクト「職場改革推進プロジェクト」を発足しました。生産性高く働くことを目指し、多様な働き方を認め合う文化を醸成していくことをプロジェクトの目的とし活動をしています。定時を17:00に変更したのも、この一環です。プロジェクトでは、女性社員、男性社員、若手社員、課長職など、ワーキンググループをいくつか作って、グループ10社200人以上の現場で働く社員から当社の課題や、「こんな制度があったらいいな」という声を募りました。
先にお話しした「社内インターンシップ制度」の導入も、このワーキンググループからの提言によって進められたものです。
——社員で構成されたプロジェクトチームの声を制度化に繋げていく…「自分たちの声が反映されている制度」という納得感もありますね。
佐々木さん:
そうですね。女性の仕事と家庭の両立では、制度を作っていく上でライフイベントによってまずは「辞めない」という部分と、「ありたいキャリアを実現できる」という2つの観点があると思います。育児などのライフイベントを機に余裕を持って働きたいという人もいれば、本当はもっと働きたいという人もいる。それぞれの社員が必要な制度をうまく使って、その人らしく思い切り仕事をすることを応援していきたいですね。
育児支援の制度を拡充した時も、「女性に適した働き方」という観点ではなく「この人に適した働き方」を本人が選べるようにと、個人に焦点を当て、掘り下げて人事制度を作っていきました。さまざまな状況の人にフィットする制度になっていったのかなと思います。
——制度が充実していく反面、社内での「制度の認知度」や「使いやすさ」についての課題ありますか?
佐々木さん:
先輩社員がロールモデルとなって積極的に制度を使っているので、制度の使いにくさ、認知度の低さにはそれほど課題は感じていないです。
今後より広げていきたいと考えているのは、キャリアチャレンジ制度のような挙手制の制度においての「女性のマインドチェンジ」について。やはり子育て中の女性社員は「子どもも小さくて時間にも制約がある中、自分から手を挙げてもいいのかな」という引け目を感じている人も多いです。
もし少しでもやってみたい気持ちがあるのなら、「チャレンジしてみよう」というマインドを大切にしてもらいたいです。初めの一歩として「まずは社内インターンシップ制度を活用して希望部署を知ることからアクションを起こしてみては」、と社内研修でも積極的に声がけをしているところです。
——さまざまな事業展開をする中で、柔軟な思考を持っていないと前進できないという考えが根底にあるオリックス。誰もが働きやすく、能力を発揮できる環境に整えるための細やかな制度作りへの体制が伺えました。キャリアチャレンジ制度のような自発的に働く場所を選択できる制度は、社員の働きがいにつながっていくに違いありません。
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次回は育児と仕事を両立し、キャリアチャレンジ制度を利用して希望部署への異動を叶えた船舶融投資グループの武山葉子さんにお話を伺います。
取材・文/佐藤有香 撮影/緒方佳子