山口もえさん

デビュー当時から変わらず自然体で、ありのままの生き方を見せてくれる山口もえさん。現在は、14歳、11歳、4歳の3人のお子さんを育てるママでもあります。デビューから仕事もプライベートも包み隠さず伝えてきた山口もえさんの生き方や仕事観は、今を生きる私たちのヒントになることも多いはず。

芸能界デビューのきっかけになった恩師との出会い

── 山口さんが現在のお仕事を始めたのは、何歳のときですか?

 

山口さん:

この世界に入ったのは16歳の時です。さきほど、このインタビューを受ける前に恩師と会ったのですが、その方がいなかったら今の私はいないだろうというくらい、大きな出会いでした。

 

実は、私は芸能界にはまったく興味がなかったんですよ。たまたま雑誌に「ダンスレッスン無料」と載っているのを見て連絡した先が芸能事務所だったんです。

 

当日見学に来て「あ、ここは芸能事務所なんだ…!」と気づいて、「すいません。間違えちゃいました」と言って、帰ろうとしたんです。そのときに恩師、現在の会社の会長が「芸能界に興味がなくてもレッスンだけ受けてくださってもいいんですよ」と言ってくださったんです。

 

── お母さんは、芸能事務所のダンスレッスンに参加することについてどんな反応でした?

 

山口さん:

母親は「ほら言ったじゃない。ここはダンス教室ではなくて芸能事務所なのよ。もう帰りましょう」って。

 

── ところで、なぜダンスレッスンをしようと思ったんですか?

 

山口さん:

私は、幼い頃からバレエのレッスンを受けていて、バレリーナになるのが夢だったんです。当時はかなり熱を入れてやっていて、通常のバレエレッスンとは別に、夏休みなどの長期休みには別のバレースクールに行ってより高いレベルを目指そうと言う時もありました。

 

ただ、そこで気づいたのは「すごくうまい人がいっぱいいる。自分はそこまでうまくない」ということ。そこで逃げたくはなかったし、負けたくはなかった。ただ、やっぱり職業として進むには厳しいのかなというのを高校生ながらに感じたのもあります。

 

もうひとつ、ちょうど同じころに男性との1対1のレッスンが行われるようになり、思春期だったこともあって恥ずかしくなってきてしまったんですね。それもあり、バレエ以外のほかのダンスもしてみたいと思うようになったんです。

 

あのときダンスを続けていたらこの仕事はしてないし、あのとき恩師に出会わなかったら、今の事務所に入ることもなかったと思います。人生って、どこでどうつながるかわからないものですね(笑)。 

CMが決まった直後に「この仕事向いてない」と思った出来事が

山口もえさん
バレリーナになるはずだったんですがと笑う山口もえさん

── ダンスレッスンからどのように芸能のお仕事をするようになったのでしょうか?

 

山口さん:

最初はダンスレッスンだけをしていたんですが、一緒にレッスンしている友達が「今度、このCMに出るんだ」という話をしていたんです。それを聞いて「楽しそう!私も挑戦してみたいな」と思って、オーディションに行くようになったんですね。

 

はじめてのお仕事がお味噌のCMだったんですけど、そのときに合わせ味噌、白だし、赤だし、豆乳をたくさんもらって。それを家に帰って家族に渡したら、みんなすごく喜んでくれたんです。「このお仕事を続けたら、家族が喜んでくれるんだ」と、私自身もとてもハッピーな気分になりました。

 

── 同じ職業を30年続けていると、良いときもあれば落ち込むこともあると思います。山口さんの場合はどうでしたか?

 

山口さん:

お味噌のCMに出演したときはすごく嬉しかったんですが、最初は自分にはこの仕事は向いてないんじゃないかなと思うこともありました。

 

というのも、マネージャーさんから「もえちゃんは滑舌が良くないから、ドラマをやりたいなら滑舌を良くしたほうがいいよ」といわれたんです。それで初めて自分の話し方は人と違うんだということに気づきました。

 

実は私、この仕事をするまで自分の話し方が特徴ある話し方だと思ったことはなかったんです。

 

そのことを恩師に相談したら「もえの話し方は、もえの個性なんだからそのままでいいんだよ。でもお芝居をする時だけは滑舌が良くなければいけないから、レッスンはがんばろうね」と言ってくれたんです。

 

その言葉を聞いて、「私自身のことを受け止めてくれた」というのがすごく嬉しかったです。

何かが起こったとしても好転するきっかけがある

山口もえさん
私を受け止めてくれた恩師に感謝しています。

── 人との出会いは大きいですね。

 

山口さん:

本当にそう思います。

 

マネージャーさんも、私が落ち込んでいたら「もえちゃんは将来どんなことをしたいの?」と聞いてくれました。

 

私が「オードリーヘップバーンさんみたいにボランティアをして、多くの人を助けたいです」と話したら、「この仕事で何でもいいから成し遂げてごらんなさい。そしたら将来、あなたが何かしたいと言ったときに、一緒にやりたいですと言ってくれる人がいっぱい現れるかもしれないよ」と伝えてくれたんです。

 

その言葉を聞いて「そうか。じゃあもう少しがんばってみよう」と思ったのが、かれこれ30年近く続いたという感じです。

 

人生っておもしろいなと思います。私はずっとバレリーナになりたくてがんばってきたんですが、それを諦めたときに、また違う道が開けました。

 

初めてのCMで喜んだあとに、話し方を指摘されて落ち込んだこともあります。でも、結果、それがまたがんばるきっかけになりました。

 

何か起こったとしてもその時は大変かもしれないけど、実はここって好転するきっかけなんじゃないかな。「ピンチはチャンス」じゃないけど、乗り越えた先にまたいいことがあると思います。こう思えるようになったのは16歳から20歳くらいにかけての出来事が大きかったなと、今振り返ってみて改めて感じます。

 

PROFILE 山口もえさん

1977年生まれ。16歳でデビューして以来、モデルやバラエティー、女優として活躍。愛玩動物飼養管理士2級、野菜ソムリエプロ、ホリスティックビューティアドバイザーの資格も取得。3児のママとしてまい進中。
文/間野由利子 写真/葛城敦史