共働き時代に合った私らしい生き方・働き方を模索するCHANTO総研。

 

前回は、申請すれば誰でも時短勤務ができる、広島電鉄株式会社の「短時間正社員制度」についてお話を伺いました。今回は、1分刻みで出勤時刻を調整できる時差出勤制度や、社長肝いりの企業内保育園について、引き続き広島電鉄の人財管理本部の酒井さん、岡田さん、秘書室の前田さんに伺いました。

 

PROFILE

(左上)人財管理本部 労務課 岡田健太郎さん (右上)人財管理本部 労務課 酒井悠也さん (下)秘書室 前田実可さん

時差出勤はコロナ禍で1分刻みOKに

──前回は「短時間正社員制度」についてお話を伺いました。その中で、現在は時差出勤も実施されていると話されていましたが、時差出勤はいつ頃からできるようになったのですか?

 

酒井さん:

時差出勤制度は、2018年に導入しました。これは事務系の社員が使える制度で、当初は出勤退社時間を1時間単位でずらすことが可能という方法からスタートし、2020年からは30分単位でずらせる制度に変更しました。また、20206月からは新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から、出社時間や退社時間をラッシュ時間帯からより効果的にずらせるように、試験的に1分刻みで可能としております。例えば746分に出社したら、1646分に退社できるということです。

 

勤務時間の設定はまったく制限がないので、業務上の必要があれば、在宅勤務も利用して早朝から勤務することもできます。コアタイムを設けていないので、本人のライフスタイルに合わせて勤務することが可能なんです。定例ミーティングがある場合でも、どうしてもそれぞれの予定が合わない場合は、個別に連絡を取るなど柔軟に対応することが多いですね。

 

在宅勤務と組み合わせた中抜けも試験的に可能にしており、勤務中に1時間とか2時間抜けて、また勤務に戻ることもできます。その日のトータルの実働時間がたりていれば問題ありません。それぞれのメンバーのスケジュールについてはイントラネット上で共有するなど、前日までに翌日の勤務を所属長に伝えて共有するよう意識して取り組んでいます。

 

酒井さん:

事務系の職種はタスクが決まっていて、それが時間内にできていれば問題がないので、こうした柔軟な働き方ができるんです。時差出勤と在宅勤務を併用することで、時短をしていた社員がフルタイムで働けるようになったという例も聞きます。

 

──出社時刻を1分刻みでずらせるなんて、朝、余裕が生まれそうですね。

 

前田さん:

本当に、子育て中にはすごくありがたいです。私は毎朝8時半に出勤するように設定しているのですが、子どもを保育園に預けるときに先生と話をしないといけなかったりして、日によっては5分、10分遅れたりすることがあるんです。フレックス制度の会社なら当たり前かもしれませんが、出社時刻をずらせるのは本当に助かっていますね。

保活不要!退社後5分で子どもに会える

前田さん:

弊社には直営の企業内保育園「ひろでん まめっこ保育園」もあるのですが、この保育園は社内で挙がった声をもとにつくられ、さらには会社のトップである社長の理解があったからこそ実現したものだと思います。

 

当時、保育園設立の話を聞いても私自身まだ子どもがいなかったこともあってピンとこなかったのですが、20184月に開園すると、利用する社員からも好評で、私も出産して仕事復帰することになったときすごくありがたかったですね。社内報などでも保育園の行事が紹介されるなど明るい話題を提供してくれるため、今では会社になくてはならない存在になっています。

──企業内保育園は広電の社員であれば誰でも利用できるんですか?

 

前田さん:

この園は弊社の社員または契約している他社1社の社員が利用できて、05歳児まで預けられます。

 

定員30名で、アットホームな雰囲気の園です。妊娠した時点で利用するつもりであれば枠を押さえてもらえるので、復帰後の預け先に困ることはありませんでした。私が住んでいる地域での保活は大変だと聞いていたので、すごく助かりました。自分が復帰したい時期に確実に復帰できるのがいいですね。

 

──妊娠中に保育園が確保できると、安心して育休が取れますね。委託ではなくて直営というのも珍しいですよね。

 

前田さん:

保育士さんたちも皆弊社の従業員なので、会社のことも私たちの仕事についてもよくわかってくれていて、助かることが多いです。直営であるからこそ、預ける親(弊社社員)の声も反映しやすいですし、この保育園独自の保育が実現できているのかなと思います。

 

保育園は会社から5分もかからない距離にあるので、子どもと一緒に通勤できて、仕事が終わったらすぐに会える。子どもと一緒にいる時間もその分長く確保できて良かったと思います。

企業内保育園に入れたことで、上司や同僚も子どものことを知ってくれていて、コロナ前は仕事が終わったあとに子どもも連れて一緒に食事に行ったこともありましたね。そういう交流のおかげで子育てへの理解も得られやすかったと思います。

 

企業内保育園利用者には、パパが広電社員で、パパの送迎というケースも多いんです。ママの送迎が多いイメージがありましたが、そうではないのも特徴的かなと思います。秘書はあまり現場の社員と話す機会が多くなかったのですが、保育園つながりで乗務員さんたちと話す機会が増えたり、他部署の社員との交流の場ができたことも良かったですね。

 

──企業内保育園はメリットがたくさんあるんですね。社長さんが社員の働きやすい環境や制度作りに積極的な印象を受けました。

 

酒井さん:

社長はもともと人事部門にいたこともあって、人に対する投資というところは先んじて取り組んでいるところがありますね。

 

逆に社員からのボトムアップも結構あって、時差出勤などは下から作り上げて実現したものです。いい意味で社長が雰囲気を作ってくれて、社員がそこにのっかっていろいろな施策を行っているというようなイメージです。

 

岡田さん:

今年の1月には法改正に伴い、子の看護休暇制度を半日単位の取得から1時間単位の取得に変更しました。また、看護休暇は無給の会社も多い中、弊社では有給扱いになっています。

 

前田さん:

1時間単位で、しかも有給になるのは本当に良い制度だと思います。例えば先日は2時間だけ看護休暇を取って、子どもを皮膚科に連れて行きました。ちょっとのことでも早めに病院に連れて行けるのは親として安心できるので、とても助かります。また、土曜日だと病院がすごく混むので、平日に行けたのも助かりました。

 

今後は「小1の壁」の話も聞いているのでどうなるかわかりませんが、時短勤務や時差出勤、看護休暇などを併用することで乗りきりたいと思っています。小学校の面談や授業参観など学校行事にも様々な制度をうまく利用して参加していきたいと思います。弊社には、そういう選択肢がいろいろあることが心強いです。

 

 

1分刻みの時差出勤制度や、有給の休暇として取得できる子の看護休暇など、従来の制度の運用を変えるだけで社員にとって“働きやすい”が実現できることが、取材を通してわかりました。

 

また経営者と従業員の双方が“働きやすさ”を常に考え、時代の変化に合わせて取り組むことが大事なのではないでしょうか。

取材・文/田川志乃