閻魔帳、都合の悪いことは書かれない

ある日、いつものように義母が日記を開き、

 

「〇年の今頃はサカヱさんがインフルエンザで寝込んでて、私が全部ご飯作ってたんですって!」と言ったとき、ふとその頃の記憶が蘇ってきました。

 

「その前に確か、お義母さんもインフルに罹ってませんでしたっけ?」

 

そう、普段元気印の義母には珍しく、その年は真っ先にインフルエンザに罹患して数日寝込み、その後私が(おそらく)義母からうつされる形で同じインフルA型にかかって寝込んだのです。

 

別に恨んでいるわけではありませんが、私が倒れる前、数日間は義母も自室で隔離されており、その間、私が義母にせっせと三度の食事や飲み物を運んだり、病院に送迎していたはずなのです。

 

私に言われて日記帳のページをめくった義母は、

 

「ああ、確かに私も寝込んでたみたいね。部屋に籠って退屈だって書いてあるわ」

 

いや、自分が世話されたことはスルーなのかよ!

 

思わず心の中で前のめりに突っ込んでしまいました。さすが義母。 

吐き出す先が違うだけ?義母の日記と嫁のSNS

そんな、あくまで自分目線の義母の日記に苦笑することも多い私ですが、それでは私はどこで義母をはじめ同居生活のうっぷんを吐き出しているかというと、TwitterをメインとしたSNSです。

 

もちろん実名は明かしていないから、読んでいる方は私たちがどこの誰だかからないわけですが、同居生活の愚痴を面白おかしく全世界に向けて発信していることを考えると、むしろ私の方がタチが悪いかもしれません。

 

自分だけの日記帳であれ、オープンなSNSであれ、自分の気持ちを文字にして記録するという行為は、やりどころのないうっぷんを少しずつ整理する効能があります。

 

私の場合はとくに、日ごろの愚痴をたくさんの人に笑ったり共感してもらったりすることで、ともすれば落ち込みがちな気持ちを何とか上向きに軌道修正できていると思うのです。

 

もちろん私には、とても義母のように、自分の書き込みを義母に読んで聞かせる勇気はありまえせんが…。

 

自分の気持ちを吐き出せるすべがあるというのは、義母にとっても私にとっても良いことには違いありません。これからも末永く日記を書き続けて欲しいそしてできれば私の前で読み上げるのはやめてほしいと思う同居嫁です。

文/甘木サカヱ イラスト/ホリナルミ