1日30回授乳した日も。ママ友の言葉に救われる

双子の世話をする茂呂さん
食事、風呂、寝る準備をする間は息をつく暇もない

 

187月下旬、突然破水して2人の女の子を帝王切開で出産。2858グラムで生まれた長女は元気がよかった一方、次女は2214グラムと小さめで、たまに呼吸が止まることもあったため口にチューブを入れるなどの処置を受けました。茜さんは1週間ほどで退院しましたが、双子はその後も1週間ほど入院。毎日病院に通う中、「私がもっと動かずにいたら、もう少し大きくなってから産んであげられたのかもしれない」と申し訳なさがつのったといいます。

 

双子が退院してからは、休みのない育児が始まりました。 授乳はそれぞれ3時間ごとですが、母乳の出が悪かったこともあって1人につき30分は授乳、その後ミルクを足していました。結果として1時間ずつかかり、終わったら次の授乳まで1時間しかないという日が続きます。「小さく生んでしまったから、強く育てたい」と思っていたため母乳にこだわり、1人につき15回、計30回ほど授乳をした日もありました。

 

ほとんど寝る時間はなく、心身ともに疲れ果てて「寝ない方がいい」と思っていたのもこの時です。茜さんの母親や公一さんもサポートしますが、茜さんは「子どものことは自分がやらなきゃいけない」と感じていて追い詰められていきます。

 

救われたのは、同じく双子を育てている看護師のママ友との会話がきっかけでした。 母乳の出が悪いことを相談したら「ミルクを使っていいんだよ。その方が寝てくれるし、発育にもいいよ」とアドバイスされ、考えが変わります。母乳の出が悪いので授乳の回数が増え、睡眠不足によってさらに母乳が出なくなるという悪循環に陥っていた茜さん。ミルクの量を増やしたところ、少し育児に余裕ができました。

 

2人が泣き止まないことに悩み自己嫌悪に陥っていた時なども、ママ友に助言をもらうことで気持ちが軽くなり、経験者と話すことの大切さに気付いたそうです。徐々にインターネットには間違ったことや偏ったことも書かれていると感じるようになり、SNSも周囲のキラキラした投稿を見て落ち込んでしまうのでやめました。

 

双子の世話をする茂呂さん
夫の公一さんも、仕事を調整しながら子育てを担っている

 

茜さんは現在仕事に復帰し、双子は1歳を迎えました。 生活も少しずつ落ち着き、茜さんは「日々成長する子どもたちの笑顔や仕草は大きな喜び。自分も成長できたし、夫婦の絆も強くしてくれたと感じます。2人がいない人生はもう考えられない。どんなことをしても守っていきたいです」と、笑顔で話します。

 

ただ、これまでの子育てを振り返り、豊田市の事件についてはこう語りました。「私も、誰に助けを求めていいのか分からない時がありました。自分は1歳まで無事育てられたけど、(豊田市の三つ子の事件を聞いて)自分もそうなっていたかもしれない、と思わずにいられません」

 

 妊娠期から続く心身の不調に、相次ぐ授乳による寝不足。うまくいかない育児への焦り。相談したくても、手助けを求めたくても、どうしたらいいのか分からない。幅の広いベビーカーは通れない場所も多く、外出もとても勇気がいる。茜さんは、そういった様々なことの積み重ねが、多胎児の育児で親を追い詰めてしまうと感じています。

 

「安全に子どもを産んで育てるって、簡単なことじゃない。もっと双子や三つ子の育児の大変さが理解され、支援が充実してほしいと思います」