今年3月、当時生後11か月だった三つ子の次男を床にたたきつけて死なせたとして、傷害致死の罪に問われていた愛知県豊田市の母親に3年6か月の実刑判決が名古屋地裁で言い渡され、大きな話題となりました。

 

報道によると、母親はミルクを3人合わせると1日24回与えており、寝る時間もほとんどなく、成長が遅かった次男について悩んでいたといいます。

 

自治体などに相談はしていたものの、うまく支援につながらなかったようです。

 

裁判を通して三つ子育児の大変さが伝わったことで、実刑ではなく執行猶予を求める署名運動が起こり、豊田市の外部検証委員会は6月、双子や三つ子などの「多胎児」を育てる家庭に対する支援の重要性が認識されていなかったなどとする報告を公表しています。

 

虐待で命を落とす子どもの報道はなくならず、聞くだけで胸が痛みます。もちろん、虐待は許されることではありません。

 

 しかし今回は、双子や三つ子を育てているお母さんたちから、「他人事じゃない」という声がたくさん上がりました。

 

「虐待なんてもってのほか」と切り捨てることは簡単ですが、大多数の人が多胎児の育児を経験したことはありません。

 

多胎児の出産・育児は、どういうものなのでしょうか?お母さんたちの声を聞いてみたいと思います。

 

未知すぎて想像できない!妊娠期からつらかった心と体

双子の世話をする茂呂さん
双子に夕食を食べさせる茜さん。1人を抱っこしながらもう1人に食べさせることもある

 

「寝る時間はないし、むしろ寝ない方がいい、と思って寝ないようにしていました。座ると寝てしまうから、ご飯も立ったまま食べたり…今思うと、鬱っぽくなっていたのかな、と思います」

 

東京都で1歳になったばかりの双子を育てる会社員の茂呂茜さんは、生後3か月ごろまでの育児をそう振り返ります。子どもが欲しいとは思っていましたが、妊娠して双子と分かってからは戸惑いの連続だったそうです。

 

茜さんの妊娠が分かったのは2017年の冬。その後2回目の診察で双子だと知らされました。

 

その際レディースクリニックでは、新生児集中治療室(NICU)がある病院を探して出産しなければならないことなどを説明され、「普通の妊婦とは違うから。仕事は続けますか?覚悟を持ってね」と告げられます。

 

妊娠を喜ぶ気持ちから一転して不安が押し寄せ、スマートフォンで双子の妊娠について検索。多胎妊娠は母体や胎児にトラブルが起きる可能性も少なくないことを知りました。

 

「妊娠したのは嬉しいけど、素直に喜んでいいのか分からない。これからどうなるんだろう。未知すぎて想像できない」

 

それが率直な気持ちでした。さらに、妊娠中も順調な経過とはいきません。 むくみがひどく体重もかなり増えてしまったことなどから、妊婦健診では「なるべく動かないで」と言われます。安定期に入っても安静にするほかなく、自分のやりたいことはほとんどできない日々。コンサルティング会社を経営する夫の公一さんも仕事をセーブして支えますが、茜さんは「思っていたマタニティライフと全然違う。動けないのは本当につらかったです」と振り返ります。