■どうして卵は値上がりしないの?

私たちはどんなときに食品の価格が「高い」って感じますか?よく私たちは、食品の値段を1日前とくらべたり、1週間前、1カ月前、1年前と比べたりしませんか?それで、高い・安いの判断をする事が多いですね。 生鮮食品であれば、閉店間近に割り引いていないと「これって、高いかな…」と感じたりしますよね。でも、卵は時々目玉商品として特売で安くなることがあっても、1年中ほとんど価格が変わりません。 ふつう私たちが目にする価格は、「ものを作って売る」側の人たちが決めています。どれぐらいの手間や時間、費用がかかったか、それと需要など、を考えて決められているのです。 さらに卵に関しては、飼料の価格が販売価格を左右するとされています。現在、飼料のほとんどは外国からの輸入でまかなっています。 「1ドルが約108円(変動相場制)」の今と「1ドルが360円(固定相場制)」の時代と比べると、飼料を安く仕入れることができているのです。円高が卵の市場価格に大きな影響を与えていますね。 飼料ばかりではありません。たまご農家(生産者)さんは経営の大規模化を進め、人口の約倍数の親ドリ(産卵鶏:さんらんけい)を飼っています。 1戸当たり平均で63万2千羽、全国では、1億4千万羽というのですからすごいものです。 需要と供給のバランスを考えると、その親ドリたちが1日1個(実際は年間300個位)の卵を産みます。 日本人は一人当たりの年間で約330個と、メキシコに次いで2番目に多くの卵を消費しています。 他に、2018年(平成30年)には、香港などに15.3億円も輸出しています。これは日本産の卵が生食に適した品質であることをプロモーションした結果だそうです。いっぱい作って、いっぱい売る(食べる)、これって安くなる法則ですよね。 生産競争の激化によって市場価格が下がっていることもありますが、親トリ(産卵鶏)の品質改良、養鶏場の整備・管理など、生産者(たまご農家)の皆さんの努力で安価の卵ができているわけです。これが「物価の優等生」といわれる理由です。


■江戸時代でも卵って安かったの?

そういったわけではなさそうです。江戸末期に卵の販売を目的とした養鶏所ができましたが、養鶏所ができたからといっても一般庶民が今ほど簡単に食べられたわけではありません。 それまでは農家が庭で飼っていたニワトリが産んだ卵を、野菜といっしょに売っていたということらしいです。 江戸末期に書かれた風俗誌「守貞謾稿(もりさだまんこう)」には、ゆで卵(卵の水煮)が1個20文で売られていたと書かれています。「江戸時代物価早見表」を見ると、1文を16.5円として換算していますから、ゆで卵1個が今でいう330円になります。 コンビニで売られている味付け煮卵ですら、さすがにそこまでは高くないでしょう。当時は月見そばなんてかなりのぜいたく品だったのでしょうね。 少し時がたつと、将軍家の献立になるほどのごちそうだった卵が、徐々にですが安くなり、多くの江戸っ子たちに広まって口にされるようになったとのことです。