11月5日は「いいたまごの日」。食品の値上げが続くなか、卵や鶏肉など私たちの食に密接に関わる仕事があります。鶏は性別によって育て方が異なるため、ひよこの段階で分けて飼育する必要があるのですが、その選別のプロが「初生雛鑑別師」。世界での需要も高いという、知られざる日本発祥の技術に迫ります。
「1時間に1000羽」知られざる初生雛鑑別師の仕事
初生雛鑑別師として働く高橋香織さん。まだ外が暗い4時ごろから仕事が始まり、ひよこを1羽ずつ手に取って性別を見分けていきます。一見、ほとんど違いがわからない、その日生まれたばかりの雛を、1時間に1000羽ほどのスピードでオスとメスに分けてきます。

「フワフワの可愛いひよこに毎日触れるなんて最高!と最初に感じた気持ちは変わりませんが、いざ仕事となると可愛いと思う暇はありません。精度とスピード、高い集中力を求められる仕事です」
高橋さんたち初生雛鑑別師の仕事は養鶏業を支える重要な役割を担っており、初期の段階でオスメスを分けることが養鶏場の飼育コスト削減につながるといいます。
「日々の仕事は、ひよこの出荷時間から逆算して作業を始め、依頼分のひよこを分け終えれば仕事は終わりです。昼くらいに仕事が終わることがほとんどなので副業をしている人もいます。黙々とオスメスを仕分けていくため、細かい作業を続けられる人に向いている仕事ですね。肛門の内側にある生殖突起を見て、オスメスの違いを見分けますが、鶏の種類によっては羽で見分ける方法もあり、羽での鑑別の場合は1時間に4000羽ほど分けることが可能です」
接客→鑑別師 異色の経歴
初生雛鑑別師として23年目を迎える高橋さん。以前は百貨店のジュエリー担当として接客の仕事をしていました。
「働いて4年が経ったころ、『私じゃなくてもこの仕事はできる。もっと自分の特性に合った仕事があるのでは?』と、得意なことを書き出していた時期がありました。ちょうどその頃、クイズ番組でこの仕事が紹介され、観た瞬間に『これだ!』と、まさに雷に打たれたような感覚になりました。すぐに鑑別師協会に電話して資料を取り寄せたことを覚えています。もともと動物が好きで、小学生の頃は率先して飼育係をし、卒業アルバムの将来の夢は『ムツゴロウ王国で働きたい』と書いていましたので、動物にかかわる仕事に憧れがありました」
初生雛鑑別師になるには養成所への入所が必要ですが、視力のよさや指先の感覚など繊細な技術が求められるため、25歳未満という年齢制限が設けられています。高橋さんは24歳で養成所に入り、当時、史上最短でプロ試験に合格しました。
「年齢制限を知って焦りましたので、すぐ行動しました。養成所ではとにかく技術を身につけるための実習を繰り返し行います。試験では正確性とスピードが求められ、100%の正解率でも規定のスピードに達しないと合格できません」