「産後ケア施設」ならぬ「介護ケアホテル」とは

── 在宅介護の分野でいうと、テクノロジーによって介護のあり方をどのように変えていきたいですか?

 

宇井さん:在宅介護でいえば、ちょっと賢くなった家電や家具が、介護者を見守るような姿を思い描いています。たとえば、家の中に置かれるAI家電やAI家具が介護用のセンサーとつながり、何か問題があればアラートで家族や本人にお知らせするとか。介護って別名で「生活支援」とも呼ぶのですが、生活の場に溶け込むスタイルが望ましいのかなと。

 

── 宇井さんは在宅以外のサポートも考えているそうですね。

 

宇井さん:当社では現在、家族と介護者が一緒に短期宿泊できる「介護ケアホテル」の構想を進めています。近年、出産後の女性をケアし、育児サポートをする産後ケア施設が増えていますが、その介護版のようなイメージです。介護職員がそばにいることで、必要なときに支援を受けながら、家族と過ごす時間を持てる場所です。

 

これまで、介護は施設に預けるか、在宅で家族が引き受けて頑張るかの2尺になりがちでした。介護ケアホテルは、そのあいだにある選択肢として、無理なく関わり続けられる環境をつくるものだと考えています。

 

そして現在、この構想をさらに具体化したプロジェクトとして進めているのが「ねかいごとホテル」です。「ねかいごと」とは、介護の現場でつぶやかれる「こうだったらいいのに」という願いを、願いのままで終わらせず、テクノロジーや人の力で叶えていく取り組みです。「ねかいごとホテル」では、食事や入浴、移動や会話といった日常の一つひとつにある願いを起点に空間や体験を設計し、不安や負担を先回りして小さくしていきます。そうすることで、「介護をする時間」を「一緒にいられる時間」へと変えていくことを目指しています。

 

今年3月には高輪ゲートウェイにて、「ねかいごとホテル」のコンセプト展示として、8つの“ねかいごとルーム”のパネル展示を行いました。2日間で200名を超える方々にご来場いただき、各ルームに対する関心や共感についてヒアリングを実施しています。こうした実証を通じて得られた気づきをもとに、「ねかいごとホテル」を、介護者の心に寄り添いながら“ケアする人のためのケア”を実現する場として、今後さらに形にしていきたいと考えています。