駅や商業施設などで、冷や汗をかきながらトイレの行列に並んだ経験はありませんか?「あと数分早ければ」「誰かすぐに出てきてくれれば」。そんな切実な願いを、IoTの力で解決する取り組みが始まっています。個室内に表示される「あるメッセージ」が利用者の行動を変えているのです。

トイレの行列にうんざり、が開発のきっかけ

駅で、商業施設で、イベント会場で、オフィスで…。トイレの行列にうんざりしたことは誰にでもあるはずです。

 

「私自身、オフィスで仕事をしているときに、トイレの空きを探すのに苦労した経験があります。トイレへ行ったら満室で、仕方なく別のフロアまで移動してみる。ところが、そちらもまた満室で、結局、さらに別の場所を探すことになる。そんなことが何度もありました。気づけば数分、場合によっては10分以上が過ぎている。本来なら仕事を少しでも進められたはずの時間です。忙しいときほどイライラしてしまいます」

 

社員のなかには、子連れで外出したときに、「漏れちゃう」とグズる子どもをなだめながら、トイレが並んでいてどうしようと困ったという声もありました。そんなとき、「だからさっきトイレに行きなさいって言ったのに」と子どもにあたりたくなってしまったりして、心の余裕までなくなってしまいます。

 

「たとえば、食事をとるラーメン屋さんの行列は楽しみな時間かもしれません。でも、トイレの行列は家族との楽しい時間を損ない、仕事中なら本来業務にあてられたはずの時間を奪われるムダな時間でしかなく、社会的なロスなんです」

 

河野剛進
AirKnockを展開する株式会社バカンの代表取締役社長、河野剛進さん

トイレの待ち時間というロスを減らせないか──。株式会社バカンの河野剛進さんが、そんな課題意識をもとに開発したサービスが「AirKnock」です。

 

「トイレの行列を解消するには、一般的には個室の数を増やす方法があります。ただし、既存の施設やビルでは改修に時間もお金もかかり困難です。そこで私たちがとったアプローチは、『トイレの長居』を防ぐことでした。一人ひとりの滞在時間を減らせば、利用者の回転率があがり、先に挙げた『漏れちゃう』みたいな待ち時間も減らせるはずだからです」

 

長居を防ぐAirKnockの仕組みはいたってシンプルです。個室のドアに設置したセンサーを使ってドアの開閉を検知し、個室一つひとつの利用状況を把握。個室の大部分が埋まったらディスプレイに「混雑してきました」、個室が全部埋まったら「満室になりました」と表示。長時間利用者には、個室内での経過時間も表示します。

 

用を足しながらスマホに気を取られるなど、トイレに長居する人がディスプレイを見て「いけない、出なきゃ」と、自然に思せる仕組みです。AirKnockは2019年のサービススタート以来すぐに評判になり、現在は約1万3600個室で稼働中。導入先はオフィスが多く、商業施設、駅、スタジアムなどにも広がっています。