「娘のためにも」生まれたコンセプト

おやさいクレヨン
子どもへのギフト需要が高い「おやさいクレヨン」

── 現在お子さんは社会人になっていらっしゃるそうですが、これまでの子育てを振り返っていかがですか?

 

木村さん:子どもには寂しい思いをさせた時期もあり、申し訳ない気持ちもあります。ひとりで子どもを育てるため、会社員の頃は土日にもコンビニでアルバイトするような生活をしていました。

 

だからこそ、何か形に残るものづくりをして、娘がいつか大人になったときに、あのときお母さんは必死でこれをつくっていたんだな、ということが伝わればいいなと思いました。

 

── その結果、生まれたのが「おやさいクレヨン」なんですね。

 

木村さん:はい。青森県の自然の産物を使った、色に関するものをつくるということだけ決めていましたが、当初はハンドメイドでもいいと思っていて起業するつもりではありませんでした。でも、創業支援や起業支援の窓口に相談するなどして多くのアドバイスをいただいた結果、当時の青森県の補助金事業に認定されて従業員を2名雇用したので、「何とか事業を成功させなくては」と自分を追い込む形になりました。

 

創業メンバーは全員子育て中だったため、商品開発のコンセプトを「親子の時間をデザインする」と決めました。自分自身、子どもとの時間を十分に取れなかった思いがあり、世の中の親子の幸せな時間がつくれたら、それが娘のためにもなると考えました。ただ、補助金が出るのは9か月間と決まっており、その間に結果を出さなければいけませんでしたし、雇用のための補助金だから自分の分は出ませんでしたので、昼間はものづくりの開発の仕事を、夜はデザイナー、と寝る間を惜しんで働きました。

 

そのうち毎日、口にする身近な野菜で何か色の出るものをつくれば、親子で楽しめるのではないかと思いつき、廃棄野菜を使ったクレヨンづくりに辿り着きました。どんな野菜がクレヨンに適しているのか、どんな色が出て何で固めるのか…。試行錯誤の末、野菜とお米から生まれた「おやさいクレヨン」が完成したんです。

 

── 販路確保のため、初めて参加した「ギフトショー」で取材やバイヤーさんが殺到し、すぐに在庫がなくなるほど売れたそうですね。「親子の時間をデザインする」コンセプトは達成できたのでしょうか?

 

木村さん:100円ショップでもクレヨンが買える時代に10色2200円(税込)の「おやさいクレヨン」を選んでくださる方は「野菜の素材そのものの優しい色あい」を親子で楽しんでくださっているようです。クレヨンの色が「トマト」「にんじん」「ほうれんそう」と野菜そのものの名前になっていて、廃棄野菜を使っているという成り立ちからも、遊びを通して食育の一環にもつながっています。

 

── 木村さん自身の「親子の時間」は増えましたか?

 

木村さん:起業してからはできるだけ定時で帰る環境を整えられるようになったので、会社員時代やものづくりに奮闘していた頃よりはずっと、子どもと過ごす時間が長くなりました。娘は大学ではデザインを勉強して、いまは社会人になっています。

 

── 母の背中を見て育った結果ですね!

 

木村さん:私だけでなく、いろんな方に育てていただいたと思います。親子というのは必ずしも血縁関係だけではなくいろんな親子の形があって、それぞれ大切な人を思って「親子の時間をデザインする」ために私たちの製品を使ってほしいと願っているんです。

 

── ずっと地元の青森で事業を展開されていましたが、2024年にオフィスを東京に移されました。

 

木村さん:はい。やはり東京のほうが企業の数は圧倒的に多いですし、営業・広報活動はしやすいので。青森では作業場も併設してクレヨンの箱を組み立てて箱詰めすることもやっていたのですが、いまは作業の部分は就労支援施設にお願いしています。

 

また、シングルマザーとして育ててきた娘が進学に伴って上京したこともあり、子育てが一段落したタイミングと重なりました。人生1度きりなので、選んできた道に後悔はないです。