20年後の告白。母に話して悪夢が消えた
── そこから、ご自身の過去の傷に気づいた経験をブログで発信されたそうですね。
西坂さん:以前からつき合いのある小児科の精神科医の方がそのブログを読んで「今でも遅くないから、その悪夢のことをお母さんに話してみたらどうかな」とアドバイスをくれました。母親と語り合った時間はわずかでしたが、それ以来、不思議と悪夢を見なくなったような気がします。明確な理由はわからないのですが、自分の中で、まだ気づいた段階だった自分のトラウマを、「やっぱりそうだ」と自分で認めたことが大きかったんじゃないかなって。
── 悪夢を見なくなって本当によかったです。
西坂さん:僕、昔から「自分よりもひどい体験をした子と比べれば、自分は全然大丈夫だ」と思いがちなんです。自分を守るための生存本能というか。厳しい環境に適応するために、「自分は大丈夫」と常に言い聞かせることが癖になっていたのかもしれません。
体験を抱えている子たちと接すると、虐待に遭った後の生きづらさを感じることが多く、精神的な病気とずっと闘っている子も多い。そういう子たちとつい自分を比べてしまっていました。
でも、気持ちのどこかではトラウマと闘っていた。そのことに気づけたことは自分の中で大きな出来事でした。同じような経験をしている人にこうした自分の体験が届いて、その人の気づきになるといいなと思っています。
…
20年もの間、悪夢という形でSOSを出し続けていた西坂さんの心。もし今、あなたが「自分はまだマシだから」「これくらい大丈夫」と自分に言い聞かせているとしたら、それは心のアラートかもしれません。自分の痛みに蓋をせず、ただ「つらかったね」と認めてあげる。あなたには今、そんな時間が必要ではありませんか?
取材・文:高梨真紀 写真:西坂來人