作品をお菓子にしていいのか…作家が見せた「意外な反応」

── 3D再現に成功した後、当初の予定だった「アクセサリー」から、なぜ「グミ」へと舵を切ったのでしょうか?

 

大海さん:検討の結果、まずは子どもたちが500円くらいで買える「置物」を作ろうという結論になりました。「sinkop」(「結び目」の意味のアイヌ語)というシリーズ名で置物の製作を始めたのですが、色味が赤や緑などポップで「グミみたいだね」という話になったんです。

 

── 工芸品を「食品」にするというのは、かなり大胆な挑戦ですよね。

 

大海さん:私自身、山田さんの素晴らしい作品をお菓子にしていいのだろうかという迷いもありました。グミは70代の山田さんには馴染みがないお菓子ですし、戸惑われるかもしれない…。それでも意を決してお伝えすると、山田さんは「木彫りの熊が若い世代に広がる取り組みならば、いいんじゃないだろうか」と笑って許可してくださったんです。お菓子は食べるとなくなってしまうものの、そのぶん、置物より気軽に幅広い層に手に取ってもらえます。伝統を別の形で広めていくことへの可能性を感じました。

 

── 山田さんのそのひと言で、本格的な開発が始まったのですね。

「ハードルが高すぎる」試行錯誤を続けた3年間と、鮭のしっぽ

── ただ、山田さんの許可は得たものの、そこから「工芸をお菓子にする」ための道のりは、平坦ではなかったようですね。

 

大海さん:そうですね。当時サポートしてくれていたコーディネーターの中屋真智子さんと、全国のグミ製造会社を調査し始めましたが、現実は厳しかったです。問い合わせをしても、「木彫りの細かな風合いを再現できない」と技術やコストの面で断られることもあって…。

 

── 職人の「彫り跡」を再現するのは、やはり至難の業だったと。

 

大海さん:「ハードルが高すぎて無理なのかもしれない」と思い始めていたとき、中屋さんから「作ってみたいと言ってくれる企業を見つけた」と連絡があったんです。早速試作してもらったら、木彫りの熊が完璧に再現されていて。「ぜひ!」とその企業にお願いすることにしました。

 

── 製造が決まってからは、順調に進んだのでしょうか?

 

大海さん:いえ、そこからもグミ用のモデル作りがとにかく大変でした。データ作成は私が請け負ったのですが、山田さんの熊のよさを崩さないまま、型取りしやすい形にしなければなりません。たとえば、熊がくわえた鮭のしっぽが取れやすい点を改良したりと、原型の美しさを守りつつ、製造しやすい形を両立する格闘が続きました。グミにしたいという構想から発売まで、結局3年近くかかりました。