「すごいな!」寡黙な職人が声を上げた瞬間

── そんな伝統の危機に、なぜ大海さんは山田さんと共に取り組むことになったのですか?

 

大海さん:札幌にある私の会社では、3Dプリンターを使い福祉施設と共同でアクセサリーなどの企画・開発を行なっています。2020年ごろ、関係者との会話のなかで「木彫りの熊を3Dプリンターで再現し、アクセサリーにできないだろうか」と相談されたのがきっかけで、山田さんをご紹介いただきました。

 

初めてお会いしたときに、山田さんの子どもたちへの想いや作家の高齢化についてうかがいました。また、ちょうどそのころは木彫りの熊の人気が改めてじわじわと高まっているタイミングで。山田さんにもたくさん商品の注文が入っていたものの、すぐに作れるものでもないしどうしようかと困っていらっしゃる事情も知りました。「3Dプリントで山田さんの熊を再現できたら、なにかお役に立てるかもしれない」と思ったんです。

 

── 最初、山田さんはどのような反応でしたか?

 

大海さん:今思うと、最初にお会いしたときは「何をする気なんだ?」と警戒心もあったのかなと思います。山田さんも「職人」という雰囲気の寡黙な方だったので、どうしたら木彫りの熊についていろいろ教えていただけるか、私も悩みました。

 

── その心の壁を、どうやって壊したのでしょうか。

 

大海さん:まずは作品をお借りし、見ながら3Dモデルを作ることにしました。ただ3か月かけても山田さんの熊のよさを再現したモデルが作れず…。最終的には北海道立総合研究機構の協力のもと、木彫りの熊そのものを3Dスキャンしました。試行錯誤の末、やっと3Dプリンターで再現できたんです。

 

── 再現された熊を見たとき、山田さんはどのような反応を?

 

大海さん:それまではお会いしても口数が少なかったんですが、彫り跡まで克明に再現されているのを見て、「すごいな!これは!」とテンションが上がっていました(笑)。どうやって作ったのかと興味も持っていただけて私もうれしかったですね。