北海道を代表する工芸品「木彫り熊」。今、作家の高齢化により伝統の技術をどう残していくのか、厳しい現実に直面しています。そんな危機を抱えたある作家と結びついたのは3Dスキャンという最新技術でした。丹精込めた作品を、子どもがワンコインに近い感覚で手に取れる形に変える── 。この一見、伝統を軽んじているようにも見える挑戦の裏には、70代の作家の「子どもたちに木彫りの熊を手にとってほしい」という切実な願いがあったそうです。企画・開発を担当した株式会社エムブイピークリエイティブジャパン代表取締役の大海恵聖さんにお話を伺いました。
「欲しいけど高い」木彫り熊を見つめる修学旅行生を見て芽生えた感情

── 北海道みやげの代名詞、木彫り熊を3Dスキャンした「グミ」が話題です。このユニークな商品が生まれた背景には、熟練の作家が抱えていた切実な悩みがあったそうですね。
大海さん:グミの原型は、白老町在住のアイヌ工芸作家・山田祐治さんが彫った熊の作品です。山田さんは長年、作品を販売するなかで「子どもや修学旅行生が木彫りの熊を欲しいと思っていても、安くても5000円ほどするので高くて買えない。あきらめきれなくて店先で熊をずっと見ている子もいて、なんとかしたい」とずっと思っていらっしゃったそうなんです。
── たしかに子どもが自分のおこづかいで出すには勇気がいる金額です。
大海さん:おこづかいで気軽に買える値段でもありませんよね。さらに現在、白老の作家さんはわずか3人。最年少の山田さんですら70代です。高齢化と後継者不足のなかで、「受け継がれてきた伝統をどう残していくのか」という課題に直面されていました。